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【時評】TUIDE、CORTIS、「K-POPらしさ」をめぐる議論……K-POPのいまを総括

2026.9.25

#MUSIC

毎日膨大な曲がリリースされ、大手・中小を問わず新しいグループがデビューするK-POPの世界。そのすべてを網羅できる人などまず存在しないだろう。けれどそんな怒涛の状況においても、「押さえておくべき出来事」はリスナーたちの間で自然と共通の話題となっていくものだ。無謀な試みかもしれないが、本稿では直近の興味深いリリースを取り上げ、時評という形でK-POPの現在地に迫りたい。

HYBEの新グループTUIDEのデビュー

夏の終わりに大きく注目されたのが、HYBE傘下の新レーベルであるABD所属のガールズグループ・TUIDEのデビューだ。

7人編成のグループで、韓国以外にアメリカ、イギリス、そして日本出身のメンバーが所属している。ちなみにSEOYEON (ソヨン)は絶大な人気を誇るTWICEのジヒョの実妹だ。統括プロデューサーはハン・ソンス。SEVENTEENなど人気グループが所属する韓国の事務所、PLEDISエンターテインメント(※)の創設者である。

※2020年にBig Hit(現:HYBE)によって買収されため、現在はHYBE傘下。現在のPLEDISに女性アーティストはいないが、過去にはソン・ダムビ、AFTERSCHOOL、ORANGE CARAMEL(AFTERSCHOOLのサブユニット)、PRISTINなどを輩出。また、ハン・ソンスのプロデューサーとしての仕事にはIZ*ONEやfromis_9なども含む。

ABDは、7月20日にTUIDEの公式SNSを開設してから情報を順次公開し、8月7日にはプレデビュー曲“GRLS”のパフォーマンスビデオを公開した。

2000年代のUKチャートから届いたようなソリッドな2ステップの上で、ミニマルでクリーンなコーデで揃えたメンバーたちが歌い踊る。サウンド面でもビジュアル面でもスタイリッシュな引き算のセンスが光るそのビデオは、シーンに大きなインパクトを与えた。そして、その高品質なトラックの秘密は、8月18日にデビューミニアルバムのハイライトメドレーが公開されると同時に明らかになる。なんと、TUIDEのデビューは2010年代に韓国ヒップホップシーンで頭角を現したプロデューサーデュオGroovyRoomがプロデュースしているというのだ。

そして満を持して8月24日にTUIDEは1stミニアルバム『TUNE&PLAY』でデビュー。タイトル曲(※)“SUN KISS”のビデオも同時に公開された。

※K-POPにおける「タイトル曲」とは必ずしもアルバムの表題曲という意味ではなく、アルバムのなかで最も力を入れてプロモーションされる、アルバムの主役となる曲のことを指す。音楽番組などでも基本的にはこの曲が披露される。

まるでMONDO GROSSO? ブラジリアンハウス風の“SUN KISS”

驚くべきはその曲調だ。ボサノバ的なスキャットによるボーカルリフと、ダンサブルなハウスビート。その上に乗るのはメンバーが囁くように歌う、リラックスしたスムースなメロディー。ベースこそ現代的で重めな仕上がりになっているが、それ以外はまるで2000年代初頭に日本や欧州で流行ったブラジリアンハウス / ラテンハウスのようだ(※)。公開直後からSNSでMONDO GROSSOやJazzanova、U.F.O.(United Future Organization)などのクラブジャズ / ラテンハウス周りのアーティストを連想する人が続出したのも、無理のないことだろう。

※そもそもこの曲のサンプリング元がイタリアのSovienteによる2001年のブラジリアンハウス曲“Copacabana (Escape From Rio) (Copacabana Dream Mix)”である。

さらに収録曲“Echo”ではジャネット・ジャクソンの2001年曲“All For You”のメロディーを引用し、アップテンポなハウスを披露。“Flip-Flop Girl”ではなんとGファンク的なシンセを取り入れながらも、チャーミングなポップスへと着地する。玄人好みな過去のサウンドを、絶妙な角度から再解釈する手腕には、多くの音楽好きが唸らされた。

とはいえ、Y2Kなサウンドを取り入れること自体は、K-POPに限らず現代のポップスではありふれた手法だ。TUIDEの新味はそこにはない。それはむしろ、作品が醸し出すナチュラルで心地よい「ムード」を重視した、精緻なバランス感覚にこそ見いだせる。トラックの完成度はどこまでも高いのに、力みすぎずさらりと聞き流せる。パフォーマンスもメンバーの自然なグルーヴを重視しており、レイドバックした仕上がりだ。

“SUN KISS”の映像に異様なほど引きの画が多く、画面の彩度が抑制的で、そのうえ顔に影が落ちるシーンまである事実は見逃せない。ここでの目的は、表情の作り込みや肉体の躍動感を前面に出すことにはない。それは、ゆったりとした空気感を醸成する「風景の一部」として、TUIDEのメンバーを捉えることなのだ。

ヒップホップ、R&B、ハウスなどの蓄積を、考え抜かれたアートワークとともに、ひとつの洗練された「ムード」へと統合する。アイドル個人の存在感から一歩引き、世界観や空気感そのものを、的確なエディトリアル感覚でパッケージングする。それこそが「Tune the Tide」というグループ名――「流れを調整する」が意味するところなのだろう。

「TUIDE」というプロジェクトの完成度の高さは圧倒的だ。ただここまで周到に設計された成果物をみると、多少ローカルなアクを残しつつも聴き手を圧倒する勢いが感じられた、一昔前のK-POPとの違いを感じずにはいられない。

実際、欧米市場への受容がここ数年で急速に進んだのに従い、「K-POPらしさ」が失われていると違和感を表明するリスナーも増えてきた。そしてそれについての発言が、思わぬ形でアイドル側からなされることになる。

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