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ゆうめい10周年『養生』レポート 夢を追う若者が、夢を諦め苦しむ10年間の末路

2026.2.5

#STAGE

クリスマスを機に溢れ出す、各々の苦しみ

しかしこの10年間、立場は変わっても彼らの苦しみは癒えることがない。この苦々しさが、おかしみと悲哀を伴って描かれる。10年後のクリスマス。翌日から始まる展示会の広告を掲示するために、橋本たちはクリスマスツリーの撤去にとりかかる。その展示会とは、今や画家として成功している佐伯のものである。

橋本は、画家の道を諦めた自分が、成功した同級生の展示会のために、深夜労働をしてお膳立てしなければならない現実を突きつけられる。橋本は清水に佐伯のことを話す。親も画家で裕福な境遇にある佐伯は、社会で起こった大事件を取り入れ、コラージュした社会風刺の作品を作っている。自分は決して傷つかない安全地帯から政治的なメッセージを発する佐伯の創作姿勢に、橋本は思うところがないわけではない。

左:橋本養(本橋龍)、阿部一郎(丙次)

一方でニコニコ動画や配信サイトの歌い手を目指していた阿部は、尊敬していた歌い手と妻が不倫をしたことが発覚して離婚に至る。自分の子供がファミレスの配膳ロボットに登る様子をネットにアップして炎上した川口は、会社を解雇されてしまう。

左から橋本養(本橋龍)、川口貴司(黒澤多生)、阿部一郎(丙次)

そんな中、阿部のパワハラによって休職していた清水は、復職後、両親が離婚して奨学金で大学に通った自分とは異なる佐伯を「社会的強者だ」と批判しはじめる。そして佐伯が取り上げた事件で友人が犠牲になった経緯がある清水は、自分もアーティストとして自宅を開放し、社会的弱者を自由に受け入れる開放区を作る。また、阿部のパワハラを告発し労働環境を改善する活動も始める。しかし清水の自宅がネット上に晒されたことで、物見遊山の見学者が集まって大混乱。音楽を爆音で流しながらバーベキューをされたり窓を外されたりして、警察沙汰になってしまう。

左:阿部一郎(丙次)、右:清水唯我(黒澤多生)

そんな中、佐伯が自殺したという連絡が橋本に入る。思うところはあったにせよ、心の拠り所だった佐伯の自殺を知らされて混乱する橋本と、家族のために過酷な労働を10年間続けてきた阿部。彼らがクリスマスツリーを背景に、夢を自分から諦めて生活のために働く不遇さへの鬱憤を爆発させ、相手を非難し合い、最後に阿部が歌い手だった頃のように“アメイジング・グレイス”を叫ぶように歌う。いつまで経っても成功できず、満たされない人間の悲しみ。それをユーモラスに描く本作の頂点が、心の潤いを渇望する俳優の演技となって結実している。まさに地獄の門をくぐった人間たちの悲哀が、舞台全体にぶつけられている。

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