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メンタルヘルスケア=「健全」という誤解
─B-sideというプロジェクト名には、表に立つ自分(A-side)だけでなく、普段の自分(B-side)を大切にという意味が込められているそうですね。アーティストにおけるA-sideとB-sideの違いをどんなふうに捉えていらっしゃいますか?
徳留:アーティストの場合、A-sideを見せる対象がすごく大勢の人であり、多くは自分の名前も顔も出して活動している。そのプレッシャーみたいなものは、私たちが一般的な会社員として仕事をしているよりは大きいのではないかと。

徳留:やはり繊細だからこそできるものづくりもあり、その繊細さがいい方向に働く時もあれば、自分にとって辛い時もあるんじゃないかと思います。その振れ幅が普通の仕事より大きいと感じることはあります。私たちは、0→1でものを作ってくれるアーティストがいてこその仕事なのに、彼らに対して何も対処策を用意しないというのはちょっと違うと思うし、各自が利用するかどうかは別として、会社として用意はしていますという姿勢は必要かなと思います。
─一方で、アーティストとして色々な表現方法がある中で、メンタルヘルスケアというと、「健全さ」を押し付けられているというような誤解もあるのではないかと感じます。
徳留:メンタルヘルスケアは、その人らしくあるためというのが大前提です。毎朝ランニングして、常にスッキリした気持ちで作品を作ろう! ということではなくて、みなさんそれぞれ自分のクリエイティブに適した環境というのがきっとあって、でもそれがキープできないような気分に入り込んでしまうことがある。言葉は難しいのですが、健全・不健全という話ではなく、自分らしくものづくりができるようにしようという、それだけなんですよね。
─公開収録で鈴木裕介先生が「普段の状態からの変化」を見ると仰っていましたが、それに近いニュアンスでしょうか?

徳留:多分そうだと思います。いつもだったらここでぐっとクリエイティブに集中できるのに、なぜかうまくいかない。なんかこう……落ちていっちゃう……みたいに、ものづくりができない状況になっている。そこに対してのサポートなんです。アーティストは、例えば怒りなどネガティブな感情を昇華させて作品を作ることも絶対にあります。だから、カウンセリングによって感情を平坦にするのを目指すわけではないんです。自分らしさを保ったまま、クリエイティブに専念できる環境を整えたいと考えています。