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折坂悠太が敬愛する、Enjiとは。両者の個別インタビューで探る、その「歌」の深層

2025.10.24

#MUSIC

その歌に、折坂悠太の感覚が共鳴したワケ

ーEnjiさんの歌の背景にある感覚を教えてほしいです。折坂さんは、Enjiさんの歌を聴いていると「古い記憶や小さい頃の感覚を呼び起こさせられる」と語っていました。

Enji:ありがとうございます。音楽を聴いて、その人なりの感覚で自分と繋がる方法を見つけてくれる——それってすごく面白いと思うし、音楽の素晴らしいところだと思います。聴いてくれる人が心の正直な部分で感じて、何らかの繋がりを感じてもらえるのはすごく嬉しいです。

例えば、“Zavkhan”(『Ursgal』収録)は父に捧げた曲で、自分自身を表現したいという衝動から生まれたんです。私は2014年以降、ドイツでアメリカのスタンダードやジャズ、ブラジル音楽などいろいろなものを学んでいたんですが、2020年はパンデミックの影響で、海外でひとり生活を送ってました。

当時、私は誰なんだろう? 自分自身って何なんだろう?——そんなことを考えていました。そのときが、ひとりぼっちで自分自身と向き合う初めての機会だったんです。それまでは家族と森に住んでいたのに。

『FESTIVAL de FRUE 2025』と同じトリオ編成でのEnjiのパフォーマンス映像

ー“Zavkhan”は「森の奥深くからメロディーが歌う / 絹のようなそよ風 / 温かい風が吹く / 愛を込めて戻ってくる / 愛しい人よ」(筆者訳)と歌われていますが、まさにご家族との森での暮らしが歌われているわけですね。

Enji:そうですね。パンデミック以前に出したデビューアルバム(2017年作『Mongolian Song』)はカバー曲だけで構成されていて、私は曲を書いていないんです。

当時はエキゾチックなものとして捉えられている実感もありました。もちろん、反響をもらえたのはありがたいことなんですけど。ただ私は、エキゾチックなことをやりたかったわけではなく、自分自身のありのままのものをやりたかった。少し誤解されてしまったと感じて、しばらく作品を出す気持ちになれなかったんです。

Enji / Photo by Christoph Eisenmenger

Enji:だけど、ミュンヘンのプロデューサー、マーティン・ブラッガーからメールが来て、「君自身の音楽が聴きたい」と言われたんです。「時間がかかってもいいから、自分の曲を作ってくれないか」って。

それで時間をかけて自分の曲を書き始めました。曲を書くうえでは「ノスタルジー」がキーワードになっていたと思います。自分のインナーチャイルド(内なる子ども)というか、本来の姿を追求しながら音楽を作っていきました。自分の一番素直で、正直な姿を表現しようと思ったんです。

ーだからこそ、歌の中には古い記憶も刻み込まれているわけですね。

Enji:そうです。モンゴル語で歌おうと思ったのも、自分自身を表現するためで。だから『Ursgal』はそこまでの大きな反響はないだろうと思っていたけど、デビュー作以上のリアクションがあったんです。

モンゴル語で歌っているので、何を歌ってるかわからないかなと思っていたのに、いろいろな国からDMやメッセージをもらって。『Ursgal』は、私がいない場所にも私の音楽は届くし、たとえ言葉の意味がわからなくても何かを感じ取ってもらえると実感したきっかけでした。

Enji『Ursgal』収録曲

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