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アナログ=懐古ではなく、五感を通じた「体験」ができる
2022年、2023年と青山ファーマーズマーケットで『Analog Market』を開催していたが、今年は開催地を築地本願寺に移動した。そこには、ユニークな背景がある。築地市場跡地に大規模な再開発が進む一方で、場外をはじめとする周辺地域には、今なお市井の暮らしが色濃く残る。そんな土地に佇む築地本願寺は、仏教建築でありながらインド様式の意匠を持ち、都市の喧騒のなかに静けさと普遍性を湛えている。「変化の激しい社会の中でも続いていく、人間の営みこそがアナログである」と考える本イベントの思想は、築地本願寺にある「包容力」とどこか通じ合うものがある。

本会場のマーケットエリアには、Audio-Technicaと亀有のアートスポット「SKAC」内にある東京とロンドンに拠点を持つレコードショップ「VDS」が特別にキュレーションし、エントリー層からコア層まで楽しめるバラエティ豊かなレコードショップが揃った。北海道から九州まで、過去最多となる20店以上のレコードショップが出店し、販売ブースでは、カートリッジを祖業とするAudio-Technicaの高音質なアナログ製品を使用した、レコードの試聴も可能だ。

また、マーケットエリアではそのほかにも能登の古民家解体前にレスキューされた古道具を販売する「のとのいえ」、佐賀・有田で活動するアーティストたちの作品を扱う「Creative Residency Arita」など、「アナログ=人の営み」へのまなざしを感じさせる出展が揃う。他にも、Eテレ『おねんどお姉さん』でお馴染み、岡田ひとみによる「ねんどワークショップ」でのミニチュアヘッドホン作りや、レコード好きとしても知られる小谷実由のポッドキャスト番組『おみゆの好き蒐集倶楽部』とのコラボレーションによる「香りのワークショップ」など、子どもも大人も楽しめるハンズオン体験も充実している。



さらに、音楽とリンクしたクラフトチョコレートで注目を集める「rit.TOKYO」の会場限定オリジナルチョコレートや、美しい見た目とやさしい味わいが評判を呼び、連日行列が絶えないおはぎ専門店「タケノとおはぎ」、老舗おむすび専門店「omusubi teshima」とおにぎり動画が話題のモデル・小竹ののかによるコラボ出店など、フードエリアも充実している。アナログ=懐古ではなく、世代や趣味を超えて人と人、人と音、感覚と記憶をつなぎ直す、五感を通じた「体験」として提示されているのが、このイベントの大きな魅力である。


