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歴史的な文脈づけと異なるジャンルの横断
ー松下さんは会場でビューイングツアーのナビゲーターをやられていましたが、PARCELブースには福島の帰還困難区域の風景を描いた画家・加茂昴さんの作品があったり、山梨のスペースであるGallery Traxのブースがあったりと、東京のみならず様々なエリアのアーティストやギャラリーが紹介されていましたよね。

松下:僕にとって大事な文脈として、東日本大震災以降に都市の中から発生してきたコミュニティに寄り添ったギャラリーを歴史的なものとして捉えるという視点があります。震災以降生まれたギャラリーの多くは、商業空間というよりコミュニケーションの場としての機能が強くありました。自分がリサーチするまで知らなかったスペースも含めて、そんな個性を持つギャラリーを多く誘いました。例えば北九州のGALLERY SOAPは1990年代から活動を継続してきたアーティストランスペース。自分たちの世代の価値観だけじゃなく、そういう歴史を踏まえた上で現代の状況を見せたかったんです。その意味で他のアートフェアで見られるようなものとは違うコンテンポラリーアートの歴史を見せられたんじゃないかな。
ー今盛り上がっているスペースだけじゃなく、1990年代、あるいは震災以降といった歴史的な連なりを意識したんですね。その一方で、現在の軸で見ても美術の範囲だけではなく、飲食を提供するキッチンやサウンドパフォーマンスなど、多様な異ジャンルとの横断が仕掛けられていました。

松下:それもやっぱり90年代以降、コミュニティとしてのギャラリーは美術の世界の中だけから出てきたわけではなくて。今やファッションブランドがどこもギャラリーを持っていたりするくらい、アートに外からアプローチするのが当たり前になってますよね。美術の権威的な枠組みでは無視されていることもあるんだけど、僕はそんな外部の感性に影響されてきました。だからディレクター陣はもともとは美術畑じゃない人たちによって組織されています。
ー現に会場ではいろんなジャンルの人たちが混じって、プレーヤーもお客さんもワッと集まっていましたよね。
武田:もちろん数が全てではないけど、来場者も1万人ほど入ってくれて、反応もすごくよかったですね。
黒瀧:僕としても普段見ているアートフェアとは全く違う雰囲気だったので、『EASTEAST_TOKYO2023』が今後のフェアのモデルの一つになっていく可能性は十分あるんじゃないかと感じました。
