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様々な背景を持つ人々を自然に見せる新鮮なアプローチ
シーズン1でドラマに登場するのは、基本的に野本さんと春日さん、そして2人の仕事場の同僚だけだったが、シーズン2からは登場人物が大幅に増えた。
まずは、野本さんの部屋と春日さんの部屋の間の部屋に引っ越してきた南雲世奈(藤吉夏鈴)と、野本さんとSNSを介して出会う矢子可菜芽(ともさかりえ)。そして、野本さんが会社で新しいプロジェクトに携わることになり、上司の田中優子(池津祥子)、ウェブデザイン担当の高莹莹(段文凝)もプロジェクトに加わり、更に第18回では春日さんの取引先のスーパーの店員・藤田貴子(島田桃依)も重要な役割で登場した。
野本さんが携わるプロジェクトのメンバーとして三上宏明(三浦獠太)や澤田裕樹(大石翔太)は登場するものの、基本的な登場人物は女性。シーズン2が進む中で、南雲は人前で食事をすることが難しい「会食恐怖症」であると診断され、矢子は他者に対して性的欲求を抱くことが少ない、もしくは全く抱かない「アセクシュアル」でレズビアンであることを野本さんたちに伝えるが、殊更にそうした症状やセクシュアリティにフォーカスすることはなく、彼女たちが過ごす日常を映していく。そこには、症状やセクシュアリティについての視聴者に認知を促すと同時に、あくまで一人ひとりの人として登場人物たちを描きたいという制作側の想いが感じられる。
また、今や外国籍の人と一緒に働くことは日本で働く多くの人にとって当たり前だが、野本の同僚に中国籍の高莹莹が居て、しかも、中国籍の俳優(『テレビで中国語』などに出演してきた中国出身の段文凝)が演じるのも、日本のドラマとしては新鮮だった。登場人物が女性ばかりで、様々な背景を持つ人々が自然にドラマの中に登場する。わざわざ指摘しなければ気づかないかもしれないが、他の日本のドラマでは、あまり見たことが無いアプローチをしているのが『作りたい女と食べたい女』なのだ。