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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

HALLEYが語る、芳醇なサウンドの背景と世界基準な感性

2023.10.3

HALLEY『Daze』

#PR #MUSIC

とても真摯に「音楽」や「人の心」と向き合っているバンドだと思う。2021年5月結成、2023年9月に1st EP『Daze』を完成させた、5人組の現役大学生バンド・HALLEY(ハレー)。

ジャズ、ソウル、ヒップホップなどを基盤にしたバンドの中でも、複数のメンバーがさまざまな国で幼少期を過ごし、アメリカと韓国のゴスペルをルーツにしながら韓国R&Bを経由した歌を響かせているのが、HALLEYの他に類を見ない個性だ。そこに自分自身の深い部分を覗き込んだ言葉が乗り、人知の及ばないところにまで連れていってくれるような音楽を生み出している。

ボーカリストでありすべての楽曲の作詞を手掛ける張太賢(チャン・テヒョン)に、このサウンドを作り上げているHALLEYのルーツや彼自身の生い立ち、「音楽は自分で培ったものではなくいただいたもの」という価値観について聞いた。

早稲田のブラックミュージックサークルへ飛び込んだ

―こうやってインタビューを受けるのは初めてだそうですね。まずはバンド結成の経緯から聞かせてもらえますか。

テヒョン:もともと僕は中学を卒業してすぐくらいからずっと弾き語りをしていて、千葉のライブハウスとかで1人で歌っていたんです。上智大学に入ってからも弾き語りサークルで3年くらい過ごしていたんですけど、先輩がBee Geesの“How Deep Is Your Love”を卒業ライブで歌っているのを見て、「こういうジャンルを歌う人がいるんだ」と思って。その先輩が「the Naleioに行ったらこういうジャンルをやってる人がいっぱいいるよ」と教えてくれて行ってみたことがきっかけです。そこでHALLEYのメンバーと出会いました。

―the Naleioといえば、早稲田大学の歴史あるブラックミュージックサークルですよね。

テヒョン:BREIMENさん、坂本遥さん(エドガー・サリヴァン、MEMION)などの先輩もいますし、「音楽をやってる人に出会えるサークル」として巷では有名ですね。僕は早く音源を作って出したいという欲が大きかったので、パートナーを探そうという想いで行きました。最初にドラムの(清水)直人を見つけて、キーボードの(西山)心を誘って、そのあと心の友達だったギターの(登山)晴が加わって、僕が大学1年の時から知っていたベースの(高橋)継を呼んできて、というのが結成の経緯です。

(左から)登山晴(Gt)、清水直人(Dr)、張太賢(Vo)、高橋継(Ba)、西山心(Key)
東京を拠点に活動している5人組R&Bバンド。2021年5月、早稲田大学ブラックミュージックサークル「The Naleio」での出会いをきっかけに結成。2023年9月1日に1st EP『Daze』をリリース。10月4日よりTOKAI RADIO『TOKAI RADIO MUSIC PROGRAM SESSIONS 929』(毎週水曜21:00~21:40)のパーソナリティを張太賢が担当。

―それが2021年5月ですよね。HALLEYは5人ともがキープレイヤーだと思っているのですが、どんな音楽をやりたくて集めた人たちだったのでしょう。

テヒョン:みんなブラックミュージックが好きでthe Naleioに入っていたので、なんとなくの方向性は自然と決まっていたんですけど、最初は「ブラックミュージックの中でどれをやろうか」という感じでした。5月に結成して、6月の顔見せライブではThe Main Squeeze“Dr. Funk”、Jamiroquai“Alright”、カーク・フランクリン“Love Theory”とか、色々掻い摘んでやったんですよね。そこから「スムーズジャズはちょっと違うな」「ゴスペルっぽいものはいけるな」とか、僕たちに合ってるサウンドが徐々にわかってきてR&Bの方に固まっていきました。

そこからはポンポンと進んでいったんです。顔見せライブの日、「曲作ろうぜ」って言って、ライブ後の飲み会にも行かず(笑)、継が住んでいたところで1曲作って。7月には今回のEPに入ってる“Breeze”とか3曲分のデモを作って、8月には吉祥寺WARPでライブをしてました。そんな中、9月に僕はカナダへ1年間留学に行ってしまうんですけど。

―留学することが決まっていたから、9月までにやれることをやろうとハイスピードで進めていたということ?

テヒョン:というわけでもなく。コロナ禍だったので、留学に行けるかどうかギリギリまでわからなかったんですよね。

―1年後に日本へ戻ってきて、そこからの1年間でシングル3枚とEP1枚をリリースしています。バンドとしてはかなり順調に進んでいますよね。

テヒョン:みんな頭がよくて。ちゃんと音楽するし、加えて、音楽だけに没頭してるわけじゃないし、人間関係の構築の仕方もわかってる。ちゃんと尊重するし、「こういうことを言ったら傷つくだろうな」とかを考えられる人たちだから、いくら刺されるような言葉を言われても「これには彼の意図があるんだな」って、どんな状況でもわかり合えるんです。人間的に成熟していたことも一緒に音楽を続けられている理由なのかなと思います。音楽をやってる人って不器用な人が多いけど、この子たちは、優しいのがわかる不器用さというか。

メンバーそれぞれの音楽的ルーツと共通項

―テヒョンさん自身は、これまでどんな音楽聴いてこられたのでしょう。

テヒョン:僕は、母親と父親がクリスチャンなので、ずっと韓国人教会で育ったんです。その影響もあって、韓国とかアメリカのゴスペルをずっと聴いてました。あとはソウルとかも聴いていたし、中学校くらいからは韓国のR&Bに浸かるようになって。2014、15、16年が、今最前線にいる韓国のR&Bのアーティストたちが出てきた時期なんですけど、彼らの音源を聴きながらどんどん素養が積まれていって、そこから海外のR&Bとかも聴くようになって。高1くらいからはThe Internet、ダニエル・シーザーとか聴いてました。

日本の曲はあまり聴いてなくて。最初に「ちゃんと」聴いた日本の音楽は、藤井風さんとか。だからめちゃ最近です(笑)。カラオケで歌うためにaikoさん、平井堅さんの曲を覚えたり、学校の給食の時間にGReeeeNが流れていて歌詞を覚えたりはしましたけどね。

―今、日本にブラックミュージックをベースにしたバンドは多いですけど、ボーカリストであるテヒョンさんの身体に韓国R&Bが染み込んでいることがHALLEYのユニークさだと思うんですね。韓国R&Bやヒップホップに影響を受けている20代前半のアーティストは他にもいる中で、韓国ゴスペルがベースにあった上でR&Bを吸収しているというルートも個性的だと思いますし。ご自身としては、HALLEYでの歌唱法はどこから培ったものだと自覚していますか。

テヒョン:韓国のR&B、バラードが一番色濃いかもしれないですね。ナオル(BROWN EYED SOUL)、パク・ヒョシンとかをよく聴いてました。小さい頃はずっと、MelOn(韓国の最大音楽配信サービス)のチャートの1位から100位までをお父さんにダウンロードしてもらってウォークマンで聴いていたんですけど、その影響が大きいんじゃないかな。ゴスペルでいうとカール・フランクリン、BOYS II MENとかも聴いていたので、「韓国」と「アメリカ」という2つの国の音楽が大きいのかなと思います。

―他のメンバーのルーツはまた全然違いますか? それぞれ違うルーツがあって、それらの音が織られてHALLEYの音楽ができあがっているように感じます。

テヒョン:みんな「ブラックミュージック」という枠組みにはいるんですけど、それぞれ好きな音楽が広いですね。ベースの継もクリスチャンで、小さい頃からずっとゴスペルとかR&Bを聴いていたので僕と近くて。ドラムの直人は小学生のときに初めて聴いた盤がマイケル・ジャクソンで、ライブも録画してもらってずっと見ていたらしく。高校時代は軽音部で邦楽をやってたけど、大学に入ってゴスペルに目覚めて、今もゴスペルサークルと掛け持ちしてます。年長組――僕と継と直人が22歳なんですけど――は、結構ルーツが近いですし、ゴスペルの比重は大きいかもしれないですね。

ギターの晴は母親が香港系カナダ人で、香港で生活していて、高校入学のときに日本へ来たんですよ。最初に聴いた音楽がMETALLICAで、メタルがめっちゃ好きだったらしく、今もラウドロックとかを聴いてますね。でもフリージャズも好きって言ってたし、R&BやUKロックも聴くし、日本のインディシーンの音楽も聴くし。彼が一番、好きな音楽のレンジが広いと思います。キーボードの心はクラシック上がりで。吹奏楽でサックスも吹いていたらしいんですけど。ジャズやレアグルーヴが大好きで、最近は1980年代のソウルを聴いてるから、それが如実に表れたようなサウンドを提案してくるときがあるんですけど、「ちょっとこれはクサすぎる」とか言ったりして(笑)。

―でもその味が心さんの音色やプレイに出てますよね。ドラムのビート感でいうと、2010年代のジャズとヒップホップが接近した以降の文脈ともいえると思うので、その辺も聴いているのだろうなと。

テヒョン:めっちゃ聴いてますね。ロバート・グラスパーでドラムを叩いているジャスティン・タイソン、D’Angeloでやってるクリス・デイヴ、Questloveとか、彼もそうだし僕も聴いてます。

―EPに入っている楽曲のクレジットは作詞がテヒョンさん、作曲がHALLEYになってますが、普段はどうやって曲を作っているんですか?

テヒョン:曲によるんですけど。まず僕が叩き台を作って、そこからみんなで集まって書き上げていくことが多いですね。たとえば“Sugary”だったら、最初に僕がコード進行だけ考えて、みんなでジャムしてみて、そこから「このままだとライブ感が強いから」って編曲したり。

“Set Free”は、セクションAはドラムの直人が書いてきたリフで、そこから僕が他のリフを付け足したりメロディラインを作ったりしました。“Clear Mind”は、ギターの晴の家でギターリフから作っていたときに、急に僕が最後のCセクションのコード進行を思いついて――それもやっぱり韓国のR&Bとかスティヴィー・ワンダーの影響が強いんですけど――最後にみんなで編曲しながら作り上げましたね。

ジャーナリングのように綴るリリック

―テヒョンさんが曲を書くようになったのはいつ頃ですか?

テヒョン:高1ですね。小6のときに1年間タイに住んでいて、帰ってきて初めてギターを買ってもらったんです。ダニエル・シーザーの“Best Part”が流行っていたときで、「音楽は模倣から始まる」というからコード進行を丸パクリして作ろうと思って。自分でちょっとアレンジも加えてみたりして作ったのが始まりです。

https://www.youtube.com/watch?v=hKgl5-lkT8U

―最初に「早く音源を出したいという欲があった」とおっしゃっていましたけど、それはどういう想いからですか。

テヒョン:コロナで大学が半年くらい休みで、その後もオンラインに切り替わったので、その期間、ずっとDTMの勉強をしていたんです。当時GarageBandで作った曲がまだプラットフォームに残っているんですけど、それが自分としては超ロークオリティで(笑)。それ以降、もっとちゃんと作って出したいという欲があったんですよね。でもHALLEYと出会うまでは、こういう音楽性を共有できる友達が周りに全然いなくて。

https://open.spotify.com/track/4c09aNM6NSn9TKpZSnj45n?si=9ac180ea12e3456d

―歌詞にしたいことは、高校生の頃から変わっていると思いますか。それとも、根っこは一緒だという感覚ですか。

テヒョン:変わってない気がしますね。いつからか英詞になったという変化はあるんですけど、そのときから恋愛したときの感情とかを書き留めてよくラブソングを書いていたし。バンドではそういう曲もあれば、ハッピーな歌詞を書くこともあるし、自分との対話も多いですね。

―まさに。自分との対話ですよね。自分のために自分のことを歌にしている。そういう姿勢を曲から感じます。

テヒョン:そうですそうです。高校のときの英語の先生が大きな影響をくれました。そのときから英語の詩を読んだり書いたりする習慣が生まれて、その延長線でこういうふうな歌詞を書いているんだと思います。日記を書いてる感じですね。ジャーナルです。

―「日記」と「ジャーナル」って微妙に違いますよね。「ジャーナル」は自分のメンタルの整理とか、自分が何を考えているかを把握するためにやる意味が強いというか。テヒョンさんにとって音楽を作ることは、そういう感じに近いということですよね。

テヒョン:たしかに。吐き捨てるように書くことが多いですね。言い聞かせたり、思ってないことをわざわざ書いたり。“Clear Mind”でいうと、<What’s in the past is all for the best.>(過ぎ去るべきことだったんだきっと。)とか、ちっとも思ってないけど、そういうふうに思った方が楽になるからおまじないっぽい感じで書きました。

“Set Free”は、1段落目はすでに存在していた歌詞で、曲ができたときに付け足したんですよ。だから昔思っていたことと、それに対する自分の新しい返答が入っていたりして。Aセクション、Bセクションで雰囲気が変わるから、自分の感情も変化しないといけないなと思って、変化した感情を組み込んでみました。だから相反してる内容ですよね。自虐的な話をした上で、救われている自分を書いています。

https://www.youtube.com/watch?v=uUGijD6-BSY

―Bセクションの「you」は、「誰か」とも捉えられるけど、「自分自身」とも捉えられる書き方をされていますよね。

テヒョン:それは意図してますね。僕の中では歌っている相手がいるんですけど、聴いてくれる人が感じなきゃいけないものもあったりするし。「he」「you」とかを使って、対象がないようにすることは多いですね。

―それでいうと、“Breeze”の最後の一行<We know he’s the only king.>(結局、彼が私たちの唯一の王なんだよ。)の「he」も、今言ってくれたみたいに、誰を当てはめるかはあなた次第ということですよね。

テヒョン:そうです。誰が自分の人生の王になるのか――僕はクリスチャンなので「he」となるとそういう存在が出てくるけど――自分自身でもいいですし、人じゃなくてもいい。この音楽を聴いたときに思い出す誰かや何かが導いてくれるんだという感覚で聴いてくれればいいのかな、なんて思ったりしていますね。

―それこそ“Breeze”のグルーヴの中で聴くと、音楽が私たちを導いてくれるものであるとも取れるし。

テヒョン:素敵な解釈ですね。ミュージックビデオではそよ風がストーリーの真ん中にあって、そよ風こそ自分を助けてくれるような存在だよね、というふうに解釈できると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=-iCxQeAHkC4

音楽は自分で培ったものではない。だから努力する

―そよ風、光、雲とか、自然にまつわるワードを音楽の中でよく用いられるじゃないですか。ジャケットもそうですし。自然のものを大事に思う気持ちが大きかったりしますか?

テヒョン:すごい質問ですね(笑)。まさにそうです。「空」「時間」は緊密に関係していて、それを歌詞やアートワークで表していくことが僕たちのアルバムまでの全体的なコンセプトなんです。1stシングルからジャケットでは時間帯を表していて、“Set Free”は昼、“Whim”は夜、“Breeze”は朝方。これ、空の写真の上に水を乗せて、それを写真で撮っているんですよ。空を映し出している水面が僕たちHALLEYで、それを上からレコーディングした、という意味でこの手法を選びました。

(上から)1st シングル『Set Free』、2nd シングル『Whim』、3rd シングル『Breeze』

テヒョン:「誰そ彼(=夕暮れ)」「彼は誰時(=夜明け)」という言葉に「彼」という字が入ってるじゃないですか。「he=彼」と、「誰=わからない」という概念が近い存在としてあるところから、これをコンセプトにアルバム作ろうと考えたんです。「誰そ彼(=夕暮れ)」「彼は誰時(=夜明け)」って空だよね、というところから、空をイメージしてシングル3作、EP、アルバムを出していこうと。

1st EP『Daze』ジャケット

テヒョン:EP『Daze』のジャケットは光っぽいですよね。「時間が始まった瞬間」「ビッグバン」みたいなものをジャケットで表しました。

―“Whim”でも<東の雲に火が灯るまで>と歌っていて、夜から朝までの時間帯に音楽を作っているような描写があって、<つまらない現をまえに、詩が止まらないように。迷わないように。手離さないように。>と、テヒョンさんやHALLEYが音楽の中で何を大事にしたいのかが表れている曲だと思うんですね。

テヒョン:当たってます。バンドを始める前にも“東雲”という曲を書いていたくらい、明け方の時間帯が好きだというのもありますし。顔見せライブのあとに初めてHALLEYで曲を作ったのが夜9時くらいから朝7時頃までで、途中で休憩して外に出たときに見たのがそういう景色だったこともあって、僕たちにとって音楽と密接な時間や空気感なんですよね。だからそこを出発点にしようと。

―なるほど。テヒョンさんって、音楽というものをどう捉えてますか? 音楽をとても美しいものとして扱っているからこそ醸し出る上品さみたいなものが音に表れていると思っていて。音楽と自然に対する感じ方が重なって、こういう曲ができているのかなと思ったんですよね。「音楽とは崇高なものである」とまでいうと大袈裟なのかもしれないですけど。

テヒョン:うーん……そうだなあ。バンドって、5人それぞれが持っている音楽観を譲歩せず、容赦なくぶつけ合う中で、新しい音楽観が生まれてくるものだとは思うんですけど。

僕が個人的に音楽をどう捉えているかでいうと、「いただいたもの」という感覚が大きいです。自分で培ったものという感覚はなくて。もちろん努力も勉強も研究もするけど、「もらったもの」「借り物」という感じがする。それが故に努力を続けるんですけど。

生まれ持った声が「素敵ですね」と言われている現象が、僕が偉いからできたものだかとは到底思えなくて。ギターを買ってくれたお母さんや、海外に行かせてくれた家族がいて、環境に与えられたという想いが大きいです。絶対に、僕のものではない。僕の中で完結できないものがあるから人々は感動するのだろうし。個人的には、そういう意味で崇高なものだなというふうには思っています。

とは言え、歌って個人的なものだし、自分が書く歌詞が崇高なものだとは思えないんですよね。僕の持つ声が他の人とは違うから、人と違うメッセージを伝えられるような能力があるとは思っているんですけど。でもそれは、英語が上手な人がいたり、絵を描くのが上手な人がいたり、それぞれの表現方法が違う中で僕は歌うことや曲を作るという表現方法に長けていて、僕なりの言語があるだけという考えを持つようになりました。結局、人間だから、どうせ日頃思っていることしか書けないじゃないですか。

―そうですね。

テヒョン:そういう中で共感してもらえたり、勇気になったり、その人の傷を少し癒せるような曲がたまに生まれたり。僕が僕の傷を晒すことによって、聴いてくれた人が自分の傷について少しはよく思えるようになったり。そういう小さな日々のハプニングが起きることが、音楽がある理由かなというふうに思っています。

夢は国連で働くこと、だった

―とても素敵な話をありがとうございます。その想いで向き合っているからこういった音楽が生まれているんだなと納得しました。ちなみに今、大学では何を勉強されているんですか。

テヒョン:総合グローバル学部というところで「グローバルスタディーズ」を扱っていて、国際政治を勉強しています。僕、もともと、国連で働きたかったんです。それが夢だったんですよ。

―え!

テヒョン:いろんな国で生活する中で、アイデンティティに関して精神的に路頭に迷うときがあったんです。そこで僕の個人的な回答として、「世界の中のひとりである」というアイデンティティが生まれてきたんですね。1か国にルーツを置くより、地球をひとつに捉えて「人類」としてアイデンティティを持つ方が、もっと豊かな人生になるだろうと思って。それで思い立ったのが国連で、国際政治を勉強しようと。

―今は、国連の夢はやめて音楽の道を決断されたんですか。

テヒョン:コロナのときに「俺は音楽をやってないとダメだ」ってなったんですよね。コロナ期は勉強と同じ分くらい音楽をやっていたので、どんどん音楽に傾いていっちゃって。やっぱり得意なことをやった方がいいなと思って。音楽で成功するのも、国連の中で成功するのも、同じくらい難しいことだから、ちょっとでも自分が得意で楽しいと思える方に行った方がいいと思ったので音楽を選びました。

―HALLEYは1か国に留まるような音楽をやってるバンドではないと思いますけど、この先はどういった活動をしていきたいですか。

テヒョン:メンバーがそれぞれの活動をしつつ、意思を持ってHALLEYに戻ってこられるような、そういうバンドであれたらいいなと思ってます。それぞれがいろんなところで影響を受けて、それをHALLEYに持って帰ってくる、ということを続けたいですね。

晴は陶芸ができるし、心はLaura day romanceとかでサポートもやってるし、継はアメリカに行って教会で演奏してみたいとか言ってるし、直人も自分の曲を作りたいって言ってるので、それぞれが違う場所で輝きつつ、HALLEYとしてもっと輝けるというのが理想ですね。でも今はバンドを頑張って、まずはアルバムまで走り抜けようということをみんなで話しています。

―そういうスタンスも、最初に名前が出たBREIMENから影響を受けている部分もありますか?

テヒョン:ありますね。一番は、WONKさんの成り立ちが素敵だなと思っていて。「あ、こういうスタイルもいけるんだ」って(WONKのメンバーはそれぞれがソロプロジェクト、劇伴、芸術教育の研究、ゲーム音楽制作、プロデュース、エンジニア、料理、飲食店プロデュース、俳優など活動が多岐に渡り、メンバーで会社を経営している)。WONKは慶應のクロスオーバー研究会の先輩方で、僕もそこで一回演奏したことがあったり、「早慶戦」があったりするので、早稲田と慶應は関係性が近いのかなとは思います。

https://www.youtube.com/watch?v=SC_7grwylXo

―最後になりましたが、「HALLEY」のバンド名の由来を聞かせてもらえますか。

テヒョン:そもそも、ブラックミュージックが大好きだからこそ、黄色人種であることに対する自覚が強いんですね。なので「YELLOW」を文字って「YELLA」にして、そこに聖書の詩篇に出てくる「セラ(Selah)」という音楽記号から「H」を取って「YELLAH」にして、それをひっくり返しました。そうしたら70年に1回現れる彗星の意味もあって、いいじゃん、って。それがHALLEYの由来です。

Digital EP『Daze』

9月1日(金)配信
形態:配信only
1.Whim
2.Set Free
3.Sugary
4.Clear Mind
5.Breeze
https://lit.link/halley

『自主企画ライブ(タイトル未定)』
日程:2023年11月26日(日)
会場:東京都 月見ル君想フ

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