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バンコクで誕生した「日本風ライブハウス」
野村:タイのアーティストから日本ってどう見えているんでしょうか?
Ginn:さっき話に出たSoft Pineは「日本でライブをやることが一つの夢だった」と言っていたり、去年、日本でライブをしたYONLAPAもそうなんですが、日本のライブ環境やオーディエンスのライブ観賞の仕方に感銘を受けてます。タイはライブハウスがすごく少なくて、演奏ができる場所は大抵、ライブバーなんです。でもライブバーでは有名曲のカバーしかできない場合が多くて、インディーズがオリジナル曲を演奏できる場所はバンコクでも5、6ヶ所ぐらいしかないんですよ。機材も日本のライブハウスと比べると雲泥の差です。さらに、日本はオーディエンスがじっくり自分たちの演奏を聴いてくれる。そんな環境に感銘を受けているようです。
野村:日本に対してポジティブな思いを持ってくれているんですね。
福岡のコレクティブBOATのメンバーであり、コレクティブの中核を担うバンドMADE IN HEPBURNの雑務担当。大学卒業後、23歳の頃に「LOVE FM」でアルバイトを始め、ラジオ番組の制作に携わるようになる。RKB毎日放送のラジオ番組「ドリンクバー凡人会議」や「チャートバスターズr!」を制作していく過程で出会ったアーティスト仲間のサポートをしたことをきっかけに、音楽コレクティブBOATを設立。福岡の港湾地区・那津にスタジオを構え、楽曲からデザイン、ミュージックビデオまでを一括で制作するようになる。BOATでの活動をきっかけに、SiipやAmPm、中村佳穂といったメジャーアーティストから、Deep Sea Diving Club、クレナズム、YOUNDといった福岡のアーティストのミュージックビデオ、そしてSpace Shower TVでは福岡の新鋭アーティストに迫るドキュメンタリー「FUKUOKA COLLECTIVE」を制作。2022年からはSpotifyのオフィシャルポッドキャスト番組や、ハイタイドストアと雑誌「ペーパースカイ」による番組「THINKING CLOUD」など、さまざまな音声コンテンツをディレクションしているほか、福岡音楽都市協議会のメンバーとして、イベントディレクションを担当。福岡とタイのアーティストによるコライト企画「BEYONDERS」を開催する。
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Ginn:そうですね。でも、音楽関係なしにもっと俯瞰的に見たときに、Z世代前後の世代は、韓国の文化とかエンタメとかで育ってきた世代で、そういう世代にとって日本のプレゼンスは弱くなってきています。15年前ぐらいに、タイでも少女時代や東方神起を中心に、韓流の一大ブームがあったんですよ。それで、タイで韓流に火がつくと、主要な屋外メディアを韓国観光局がジャックして。その後に韓国の食、コスメ、ファッションが入ってきて、家電が東芝、ソニー、シャープからLG、サムスンに置き換わったんですね。
野村:なるほど。
Ginn:それでも車だけは日本の牙城だったんですが、ここ数年、中国系メーカーがEV車でのタイ市場参入を強めていて。タイは排気ガスやその他の要因で空気汚染が酷くて、政府としてEV化を促進して行く中で、中国系メーカーの存在感が強くなってます。
野村:アニメはどうですか?
Ginn:アニメ、漫画は日本産がすごく強いです。最近、僕もタイの友人から『ぼっち・ざ・ろっく!』を勧められました。その友人は、日本に遊びに行った際、下北のSHELTERに聖地巡礼で行ってました。もうちょっと上の世代になると『BECK』を読んでいるので、「ライブハウス」に憧れがあるんです。
野村:へ〜!
Ginn:ちなみに、「ライブハウス」って言葉は和製英語なので、欧米では通じないんですが、タイでは「ライブハウス」っていう言葉が浸透しています。アニメや漫画の影響も、一因としてはあるんじゃないかと思います。最近、「タイで日本風のライブハウスを作ろう!」と若手が頑張って「Blueprint Livehouse」というライブハウスが誕生しました。