NiEWにて小原晩との交換日記『窓辺に頬杖つきながら』を連載しているシンガーソングライター、みらん。彼女が二人でゆっくり話したいと声をかけたのは、本多劇場での公演を大成功させ、飛ぶ鳥を落とす勢いという言葉がしっくりくる8人組「ダウ90000」の忽那文香。聞けば二人は幼馴染で、しかしお互いが歌ったりコントしたりしてるとは露知らず、つい最近驚きの再会を果たしたそう。
気心がしれているようで別の方角を向いているような。歩幅は違うのに同じスピードで進んでいるような。二人の冒険をこの対談で少しのぞいてみてください。
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ずっと喋ってるみらん。黙々と跳ぶ忽那。
ーお二人がはじめて会ったのはいつ頃ですか?
みらん:小学校が一緒だったんですよ。私は5年生で引っ越してきて。
忽那:私は6年生のときに転入して。お互い存在は知ってたけど、クラスは違ったよね。私は1組で、みらんは5組。
みらん:中学になっても、1学年9クラスもあったから同じクラスになったことはなくて。二人とも陸上部に入って、そこからほぼ毎日一緒にいるようになりました。1年生で走り幅跳びやってたのが、私たちだけだったんだよね。でも、大会に出られる枠が決まってて、先輩が優先だし、忽那のほうがいい記録だったから私は円盤投げに変えたんです。

忽那:みらんは円盤投げのイメージだね。すごい飛ばすんですよ!(笑)
みらん:県大会に出れたくらいね。
忽那も幅跳びで県大会出たよね?
忽那:私は1cm足りなかったんだ。
みらん:そうか、惜しかったんだ。忽那は部長にもなったんですよ。
忽那:なんかノリで(笑)。
みらん:真面目なのが忽那しかいなかったもんね。
忽那:みらんがずっと横で「こうしたほうがいいよ!」って言ってくれる感じでした。

みらん:私はもう、どこにいても目立ちたがり屋。口には出さなかったけど心の中でヒソヒソと、部長になりたいと思ってたんですよ。
忽那:え、そうだったの? 今知った。
みらん:とにかく人の上に立ちたい、みたいな。なったらなったで絶対ダルくなるのはわかってるんですけど(笑)。部長は投票で決めてたから、全然真面目に練習してなかった私には無理だなって。円盤投げは走りもしないし、あんまり練習することがないんですよ。
忽那:幅跳びの砂場の横でずっとわちゃわちゃしてたよね。
みらん:忽那の幅跳びの記録を測ったりしてた。
忽那:みらんがずっと喋ってるのを横目に走って跳んでました(笑)。
ーその光景が目に浮かんできそうです。陸上部に入ってすぐに仲良くなったんですか?
みらん:最初、走り幅跳びで一緒だったから仲良くなって、家も近くて一緒に行き帰りするようになりました。
中学2年生の夏休みには二人っきりで、四国にある私の親戚の家に旅行したんです。4泊くらいだったかな。
忽那:みらんがめっちゃ高い崖から四万十川に飛び込むんですよ! 私は怖くて見てるだけだったな。
みらん:私はアクティブだからね。

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頑張ってる忽那を見て、ボロボロ泣いた
みらん:忽那はこういう感じだったから、高校で離れ離れになったけど、その後は普通の高校生活を送って大学にいって就職してると思ってた。ステージに立つようなタイプだと思ってなかったから、テレビでABC(お笑いグランプリ)の決勝見てたらいきなり出てきてびっくりしちゃって。
ーそれ以前もダウ90000はご存知でしたか?
みらん:名前は目にしてたと思うんですけど、ちゃんと見たことはなくて。ネタの前に写真が映って、「ん?」と思ったんです。忽那の顔が全く変わってなかったから(笑)。コントがはじまって、忽那が舞台の真ん中で大きい声を出しただけで涙が出てきちゃったんですよ。絶対緊張してるだろうに、頑張ってるなって。
忽那:泣いてくれたって聞いてめちゃくちゃうれしかった。「嘘だろ!?」って思った(笑)。
みらん:面白いと思う前にボロボロ泣いちゃった(笑)。でも、忽那は中学生のときから演技をやりたかったらしいんですよ。ずっと放課後一緒にいたのに、全くその想いがにじみ出ても来なかったね。

1999年4月10日生まれ、兵庫県出身。日本大学芸術学部卒業。2020年結成以降、演劇やコントで注目を集める8人組「ダウ90000」のメンバー。愛くるしい独特なキャラクターはメンバー内でも異彩を放つ。2021年M1グランプリでは準々決勝進出。2022年2023年ABCお笑いグランプリ決勝進出。
忽那文香Twitter / ダウ90000Twitter
忽那:小学3年生くらいのときにTVドラマを見て、「なんて楽しそうなんだろう」と思ったんです。ドラマ自体よりも、演技してる役者さんがキラキラして楽しそうだったんですよね。「これをやりたい」と思ってたけど、中学は部活を中心に生活してたから。
みらん:それで知ってる人が行かない高校を選んだんでしょ? 誰も知らない環境を作って演技をはじめたんだよね。
忽那:自信がなくて「演技がやりたい」って言えなかっただけなんです。
みらん:中学生っぽいな。
忽那:そうそう、中学生っぽい。
みらん:連絡先も知らなかったもんね?
忽那:高校のときにそれまでの連絡先を一回全部消したんです(笑)。LINEも変えたし。
みらん:SNSも繋がってなかったから、連絡するすべがなかった(笑)。
忽那:私は『愛なのに』っていう映画を観にいったら、エンディングで主題歌が流れているときに「なんか聴いたことある声だな」と思って。調べたらみらんの曲だったんです。もう鳥肌立っちゃって! だけどめちゃくちゃ久しぶりだし、連絡しようかどうか迷ってたんですよ。
みらん:そのうちにダウがABC出たから、私がSNS調べてDM送ったのが先になったんだよね(笑)。でも、声だけでわかるのすごくない?
忽那:みらんが歌上手かったことはすごく覚えてるから。カラオケで歌ってくれたりとか。
みらん:一緒にカラオケ行った記憶ないんだよなー(笑)。
ーもうその頃から作曲していたんですか?
みらん:まだですね。中学生のときはK-POPにハマってたんで、ずっと踊ったり歌ったりしてるだけで。

1999年生まれのシンガーソングライター。包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2022年3月に、映画『愛なのに』の主題歌「低い飛行機」(プロデューサー:曽我部恵一)を含む2ndアルバム『Ducky』をリリース。23年3月に新曲「好きなように」をリリース。(Twitter)
忽那:歌上手いとは思ってたけど、ミュージシャンを目指してるとは思ってなかった。
みらん:藤原さくらさんや竹原ピストルさんを見て、自分で曲を作ってみたいなと思ったのが高校2年生くらいだったから。保育士になりたくて大学に行って資格を取ろうと思ってたんですけど、進路を決めるギリギリでやっぱり音楽を捨てられないと思ったんです。親からは「資格取ってから音楽やればいいじゃないか」って言われたけど、今やりたいことを私は我慢できない。忽那は就職しようとか思った?
忽那:ダウになる前は服屋さんになろうかなとは思ってた。でも、高校ではじめてお芝居やったときに「あ、これだ!」と思ったし、めっちゃ楽しくて。それを今もずっとやってる感じ。
みらん:私も「聴いてくれる人のため」よりも、自分がステージに立つと楽しいっていうのが一番大きいな。
