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文化の土壌を良くしていくのが、先を歩んでいる人たちの務めなんじゃないかと僕は思ってます。(後藤)
tami:若い人たちのためにそこまでするのは、どうしてなんですか?
後藤:自分でもなんでこんなことしてるのか、よくわからないんだけど(笑)。でも、もともと自分が、環境的にあまり恵まれてこなかったというのはあるかもしれない。文化資本の少ない田舎で生まれ育ったりとか、サラリーマンしながらバンドをやっていたりとか。自分でなんとか切り拓いてきたところがあるから、自分と同じ理由で苦労している人たちの無駄な時間を減らせるようなことができたらなと思って。
文化の土壌がしっかりしていれば、みんなもっと早く曲作りや録音にアクセスできる。若い人たちが苦労しなくていいし、かつての自分も苦労しなくていいような社会を作りたいというか。そういうところを良くしていくのが、先を歩んでいる人たちの務めなんじゃないかと僕は思ってます。そうしないと先細りしていくのが目に見えてますからね。

tami:今も録音の現場って思ったより閉鎖的ですよね。エンジニアを探そうと思っても、霧の中を手探りで進んでたまたま出会った人に頼むしかない、そしてずっとその人のやり方しか知らない、みたいなことってけっこう多いと思うんです。そういう部分も、もっと選択肢が広がっていったらいいですよね。
後藤:たしかに、何もかも謎に包まれすぎてる。マッチングの方法がなにかあった方がいいですよね。そういう意味でも、大事なのはやっぱりコミュニティ作りだと思います。スタジオがそういうコミュニティの中心の場になっていくといいですよね。あそこに行けばいろんな選択肢を教えてもらえるみたいな。「Hidden Place」はそういう場になっていきそうな感じがして、見にいった時すごく羨ましく感じました。
tami:コミュニティの話ともつながるんですけど、前に、「TAMIWって仲間がいなさそうだよね」っておっしゃったじゃないですか。
後藤:音楽性からして、誰かとつるむのか難しそうだなと思って。
tami:そう、それが自分たちでもわからなくて、悩んでいるんですよね。後藤さんは、仲間がたくさんいる印象なんですけど、そもそも音楽をやる上での仲間ってなんなんでしょうね?

後藤:この間、(五味)岳久と加藤くん(SADFRANK / NOT WONK)と弾き語りのスリーマンをやったんですよ。その時すごく居心地がよかったんですよね。普段からたくさん連絡取り合ってるっていうわけでもないんだけど、会うとなぜか安心する。一緒にやると安心する人って、音楽のジャンルが全然違ってもいたりするから面白いですよね。
岳久とか加藤くんとかと一緒にライブして、ライブハウスのきったねえ階段でビールすすってると、この瞬間に立ち会えてるっていうのが、俺の音楽が間違ってないというひとつの証だなと思える。そういう感じで仲間というか、合う人のことを肌で感じてますね。