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その選曲が、映画をつくる

『僕らの世界が交わるまで』アイロニカルな「分断」の物語の、希望を示唆する音楽

2024.1.17

#MOVIE

© 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.
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浅薄vs「意識高い」の対立構造と、双方に向けられる皮肉

あえて単純化して言うなら、この映画には、社会正義(政治)と自己表現(非政治)の対立とその分断が最も太いストーリーラインとして引かれている。そうした対立構造の提示の仕方は、述べてきた通りコミカルで、ときにかなり皮肉っぽいものだ。しかも、その皮肉は、どちらかからどちらかへと一方的に向けられるのではなく、作り手の側から両者へと容赦なく向けられている。

© 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.

自己中心的で視野の狭いジギーの姿を嗤うシーンが度々あるのはもちろんのこと、反対に、同僚のささやかなバースデーパーティーにマジメすぎる一言で水を差してしまうエヴリンのなんとも世慣れない様子や、カイルの将来を想うあまり下層階級への無意識的な差別意識をのぞかせてしまう彼女の空回りぶりの描写も、ある種の「意識が高い」人々への皮肉になっている。

そんな中で、本作におけるアイロニーのもっとも鮮烈な例は、ジギーがある重要な曲をライブストリーミングで歌った話をライラたちへ披露するシーンだろう。ジギーは衝撃的な発言をして、ライラたちを唖然とさせる。多くの観客も同じく唖然とするであろうジギーのこうした言動は、戯画的ながらも、ポストSNS時代特有の浅薄性を残酷に描写している。そう考えると、本作の英語版原タイトル『When You Finish Saving The World』=「君たちが世界を救い終わった後に」も、かなりシニカルなものに思えてくる。

ジギーが恋心を抱くライラ(アリーシャ・ボー)。 © 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.
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