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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
その選曲が、映画をつくる

『aftersun/アフターサン』思い出と今が、あの名曲で交錯する

2023.5.26

#MOVIE

身体感覚と呼応する巧みなサウンドデザイン

本作において、過去の音楽が「過去の模倣」のみに供されることを回避しているのは、何よりもまず、そうしたサウンドデザインにおける各種の操作と、それがもたらす効果への鋭敏な感覚だろう。是非そういった視点から、サウンドデザイナーのヨヴァン・アイデルの手腕にも注目しながら鑑賞してみてほしい。先出のパーティーヒットがBGMとして流れる各シーンにおけるサウンドのリアルな空間性、さらには、それらの音像が他の音やカメラワーク(視点の移動)、編集に応じて微妙に変化していく様は、身体的なリアリティ=空間に鳴っている(いた)音楽を感得する私達の身体感覚と実にうまく呼応している。

© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

また、Blurの“Tender”使用例に顕著なように、そのような身体感覚が現在の「私」へと合流するのを(映像とともに)力強く支えているのも、同じく優れたサウンドデザインによる演出効果だろう。映画において、サウンドのテクスチャー、音量、レイヤー等各種の操作によって、いかにして「過去」が現在的な感触のもとへと連れ出されるのか。本作は、そうした問いへの優れた回答例になっていると感じる(そういった意味では、モダンクラシカル界の名匠オリバー・コーツが手掛けたアンビエント調のオリジナルスコアも非常な効果を上げている)。

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