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オカヤイヅミの「うちで飲みませんか?」

「謎の有識者」玉置標本と語る、マニアックな調理の楽しみ

2024.9.27

#BOOK

漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第6回はライターの玉置標本さんにお越しいただきました。

『デイリーポータルZ』での記事や、同人誌『趣味の製麺』シリーズなど、主に食分野に関するニッチでディープな執筆活動で知られる玉置さんですが、オカヤさんとは実に20年以上の親交があるんだそう。

お二人の意外な出会いの話題から、最近のニッチなお仕事、鉢植え、米不足、柔軟剤(?)の話題まで、ゆかいな雑談が展開された今回のサシ飲み。連載史上最もとりとめのない会話を、とりとめのないままお届けします。

当日振る舞われた「タコのヨーグルトサラダ」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります)

玉置さんは「謎の有識者」

オカヤ:ちょっと秋っぽいメニューにしようと思ってたのに、夏を名残惜しむみたいになっちゃった。

玉置:今日すごい暑かったですもんね。この鶏肉に乗ってるのは、とんぶり……じゃないですよね。

オカヤ:パクチーをベランダで育ててたんですけど、ものすごく茂っちゃって。実がすごくとれたから、それをナンプラーとかお酢とかで漬けたものです。だから、レシピを紹介しても誰も再現できない(笑)。

玉置:いいじゃないですか、「まずパクチーを育てます」から書いてあるレシピ。僕の記事はそんなのばっかりですよ。

玉置:パクチーを育てると、売ってるのとは違うものになるよね。(鉢植えを見て)これは紫蘇? これも野生化してますね。原種みたいになってる。

オカヤ:そうなんですよ。紫蘇とバジルがあって、本当はそのふたつを近くに植えると交雑しちゃうから、よくないらしいんですけど。

玉置:来年、ウナギイヌみたいのが生えてくるかもしれないですね。

玉置標本(たまおき ひょうほん)
ライター。1976年、埼玉県生まれ。捕食、製麺機、伊勢うどん、家庭菜園、釣り、料理の愛好家。麺類作家。著書に『出張ビジホ料理録』『育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた』『趣味の製麺』『捕まえて、食べる』『捕まえて食べたい』『作ろう!南インドの定食ミールス』『伊勢うどんってなんですか?』など。

オカヤ:玉置さんはいろいろな業界に関わってますよね。謎の有識者。

玉置:裾野の狭い、2年に1回くらい仕事が来るか来ないかなジャンルに詳しいっていう感じですね。

オカヤ:生き物を捕まえて食べる人で、南インド料理に詳しくて、製麺機に詳しい。最近はどういう仕事が多いんですか?

玉置:製麺とか、捕まえて食べるのとかは、わりとやり尽くした感じがあって。いまは特に集中するものがないから、来た仕事をやるんですけど、この前は、アニサキスってわかります? あれを発見するためのライトがあるので、そのレビュー記事を書いてください、とか。

オカヤ:ニッチ! それは誰向けの商品なんですか? 釣り人?

玉置:釣り人とか、魚料理を出すお店とか。もともと魚の血抜きとか神経締めをする機械を売っている、水産業界の有名な方がいて。その方が今度はアニサキス専用ライトを出したぞ! って、ちょっと話題になったんですよ。それで、アニサキスがいないと記事にならないから、いそうな魚を魚屋で探して(笑)。無事に1匹見つけて「やったー!」って(笑)。

オカヤ:アニサキスがいて喜ぶ人、あんまりいないですよね(笑)。

玉置:難しいですよ、不安を煽るような記事になっちゃいそうで。そういうことがしたいわけでもないじゃないですか。居酒屋に行って、おさしみをそのライトで照らしてたら感じ悪いな、とか。

日本流にしないほうがおいしい

玉置:あ、ところで、米買えた?(*)

*この対談が行われた頃、米の品薄状態がニュース等で話題となっていました。

オカヤ:残り2週間分くらいはあります。あと、バスマティライスならある。ビリヤニ作れる。

玉置:「米がなければビリヤニを食べればいいじゃない」、だ。

オカヤ:(笑)。タイ米騒動のことを思い出しますよね。

玉置:あの頃は高校生で、ファミレスでバイトしてたんですけど、ファミレスのライスがブレンド米になって、おお、と思った覚えがあるよ。

オカヤ:あれ、いま思うと、混ぜなければいいのにね。

玉置:混ぜないでタイ米フェアにして、グリーンカレーを出すとかね。いくらでもおいしく食べれる逃げ道はあるのに、と、いまなら思う。

オカヤ:日本のお米と混ぜたら、そりゃおいしくないよね。炊く時間も違うし。

玉置:うん。うどんとパスタを一緒に茹でるようなものでしょ。

オカヤ:あの頃くらいからですよね、外国の食材がいろいろ入ってきたのって。アボカドって、入ってきた頃、醤油とわさびで食べるのを勧められてたじゃないですか。

玉置:うん。トロの味がします、ってやつでしょ。

オカヤ:そうじゃないほうがおいしいですよね。

玉置:そのアンチテーゼが、今日のこのひと皿ですか? タコとアボカドと、赤玉ねぎと、これはマヨネーズ?

オカヤ:ヨーグルトですね。あとレモン汁とか、オリーブオイルとか入ってます。

玉置:料理にヨーグルトを使うと、おしゃれな人っぽいですよね。

この日のメニューは、タコのヨーグルトサラダ、とうもろこしとカレーリーフのかき揚げ、トマトのおひたし、蒸し鶏のパクチーの実がけ。タコのヨーグルトサラダのレシピは記事の最後に!

二人の出会いは会社員時代

オカヤ:玉置さんとは長い付き合いですけど、ふつうのごはんを作って食べてもらうのは今日がはじめてかもしれないですね。

玉置:オカヤさんと知り合ったのはものすごい前で、オカヤさんが25、6のときじゃない?

オカヤ:はい。私がウェブの制作会社でデザイナーとして働いていて。

玉置:その頃僕は勤めていたウェブの制作会社を辞めて、フリーのディレクターになったタイミングで、オカヤさんが勤めていた会社に手伝いで入ったりしていたんですよね。

オカヤ:一緒に、わりと硬い仕事をやってましたよね。二人で打ち合わせに行ったり。玉置さんはその頃から『デイリーポータルZ』に記事を書いてました?

玉置:そうだね。その頃、オカヤさんがプライベートで描いてるイラストを見せてもらって。「この人はいますぐこっちで食っていけそうなのに、なんで商業デザインをやってるんだろう?」って思ったのがすごく印象的です。

オカヤ:お互いに「この人はなんでこの仕事を……?」と思ってた感じですね。

玉置:オカヤさんは、そこからどうやって漫画家になったの?

オカヤ:当時、『コミティア』(*)に出店している作家に、編集者が声をかけてまわることが多かったんですよ。ある程度作風が固まってるし、そこで才能を見つける方が応募を待つより早い、みたいな。ウェブメディアがたくさん出来てきた時期で、作家が足りていなかったのかもしれないです。それで、声をかけてもらって、ウェブマガジンに漫画が載ったのが最初ですね。

*コミティア:1984年から開催されている、自主制作漫画の展示即売会。二次創作も多いコミックマーケット(コミケ)と異なり、出品できるのはオリジナル作品のみに限定されている。

玉置:賞に応募してデビューするとか、自分から編集部に持ち込むみたいなイメージですけど、そうじゃないんですね。

オカヤ:それが王道ですよね。私の場合、イラストレーターの仕事もしていたから、そんなに「漫画を成功させなきゃ! 売れないと生活できない!」みたいな感じでもなかったんですよ。いまでも、なんとなく来月の収入があればいい、みたいな感じでずっとやってます。

玉置:オカヤさんは昔から、焦った感じがしない人ですよね。

オカヤ:というか、本当に先の見通しができない人間なんです。わからないことは考えない、見えないものはない、みたいな。おそろしいことに。玉置さんは意外ときちっとしてますよね。料理のときもちゃんと計量するし。

玉置:ああ、それは製麺のときだけですね。製麺はお菓子作りと一緒で、例えば加水率が1%違うとぜんぜん違っちゃうんです。

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