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多様なジャンルが交じり合う、個性的な選曲
Tangleは渋谷の中ではまだまだ新しく、知る人ぞ知るといった店だが、ここが面白いのは渋谷にあるのに渋谷のカルチャーとは少し毛色が違うところ。それはTangleのカウンターに立っているマイケルさんとミオさんのルーツが渋谷のレコードカルチャーでも、渋谷のクラブカルチャーでもないところに由来することが理由だと思う。
店内にはDJブースがあるし、スピーカーもクラブ仕様のもの。マイケルさんは都内の様々なクラブでプレイしていたり、音楽フェスの『FRUE』に出演していたりもするDJでもある。ただ、ブースの上やカウンターに目をやると、デヴィッド・ボウイやライ・クーダー、ジョージ・ハリソンやジョニ・ミッチェル、ジェリー・ガルシアやボン・イヴェールのレコードが飾ってあり、ずいぶんロックっぽい。渋谷のクラブではなく、新宿のロックバーを出自に持っているマイケルさんとミオさんの志向がそんな店内のディスプレイに表れている。マイケルさんが様々なクラブに呼ばれるのもロック出自の彼の個性的な選曲ゆえだろう。


そんなマイケルさんが選曲することも多いTangleの店内BGMはかなり個性的だ。ジャズやヒップホップやR&B、ブラジル音楽、アフリカ音楽などのニューリリースが流れていると思ったら、インディーロックやニューウェイブ、1950年代のロックが流れたりもする。サム・ゲンデルやマカヤ・マクレイヴン、チャイルディッシュ・ガンビーノが流れたと思ったら、同じ日にThe Rolling Stonesやボブ・ディラン、Led Zeppelinの名盤がサラッと流れていたりする。様々なジャンルと古いロックが交じり合う選曲はこの店の魅力のひとつだと思う。このバランス感はミュージックバーが数多くある都内でもかなり珍しい。

また、週末にはイベントをやっていることもあるし、平日にDJがさりげなく選曲を担当していることもある。20代のジャズDJコレクティブ「No Nations」のメンバーと僕が知り合ったのもTangleだった。
ロックのレコードが並ぶDJブースの後ろの壁の中にさりげなくサン・ラやUKジャズが混ぜてあることからもわかるように、この店の音楽的な間口はほんとうに広い。そんな自由さに惹かれた若いDJがプレイしている日のTangleは僕にとってもいい刺激になっている。
