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『けいおん!』や『ぼっち・ざ・ろっく!』に続く「バンドやろうぜ」の元祖
だが、チャンスを与えられたことによって脚光を浴びたり、勝ち抜く中で音楽的に急速にステップアップしていったバンドがいたのも確かである。それに、筆者がそうだったように、この番組を見てバンドをやろうと思い立ち、楽器を手にした者がいたのならば、それはそれでおおいに「功」として語られるべきだったのではないか。入口はなんでもいい、結果的にバンドやろうぜ、という気概を煽ったのだから。それを見て今実験的な音楽をやっている人だって実際にいる。また、当時、日本においてロックは歌謡曲に対するオルタナティブな存在でもあった。反骨精神がなかった、という意見は明らかな誤謬だろう。
バンドブームは1~2年ほどの短期間で収束してゆくが、そもそも、『イカ天』ほど何らかのムーブメントやブームを後押ししたコンテンツはそうそうなかったのではないか。時代が違うが、例えばぱっと思いつくのはテレビアニメの『けいおん!』や『ぼっち・ざ・ろっく!』くらいだろう(これについては連載の第2回目で言及する)。要するに、『イカ天』に批判的だった人たちは、玉石混交の「石」の部分に敏感に反応してしまったのではないか。だが、筆者にとっても「石」は「石」でバリエーションがあって飽きることがなかったし、あれなら自分でもできそうだと思わされた。たとえ負の遺産を残した側面もあるとしても、だ。
連載第2回は12月11日(水)、第3回は12月18日(水)に更新予定。連載「『イカ天』とバンドブーム論――『けいおん!』から人間椅子まで」のTOPはこちら。
※本連載に大幅加筆を加えた『イカ天とバンドブーム論(仮)』(DU BOOKS)より2025年2月に刊行予定。