INDEX
都市で不要とされているものにアートで意味を与える
ー今回のSIDE COREの個展は「視点」「行動」「ストーリーテリング」をキーワードに構成されています。この3つはTaiTanさんのクリエイティブにも通ずるような気がしました。
TaiTan:以前テレビ東京の『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を手がけた上出遼平さんと、僕らDos Monosがタッグを組んで、放送が止まる早朝の停波帯をジャックして『蓋』(2021)という10分間のテレビ番組を作ったことがあります。その番組は、テレ東の停波枠と渋谷中の監視カメラをハックするという設定の不可解な映像と一緒に、僕らの当時の新曲を1ヶ月間停波帯に流し続けるというもので。渋谷川暗渠内の地下壕を舞台にDos Monosのパフォーマンスを撮影するなど、東京の地下にフォーカスした番組でした。
―斬新な発想ですよね。
TaiTan:テレビは朝から夜までレギュラー番組が詰まっているにもかかわらず、なぜか放送を止める空白の時間がある。暗渠も、都市が川に蓋をして無理やり地下に閉じ込めた水脈であり、その存在は滅多に知られないけれど、存在自体はしているというまるで幽霊のようです。
誰かが「都会のあるビルの地下では、深夜になると暗渠となった川のせせらぎが聞こえる」と言った。実際にそこに訪れてみると、昼間は街の喧騒に遮られて聞こえないが、夜街が静まると確かにチョロチョロと水が流れるような音がする。実際のところ、これは下水管を流れる排水の音なのかもしれない。ただ真っ黒な地下にジッと佇んでいると、自分の頭の中に自分が入っているような、または寝ているけれど意識だけが起きているような感覚に陥る。すると「これは川の音である」という誰かのストーリーに引き込まれ、見えない地下水脈のとめどない広がりがぼんやりと頭の中に浮かんでくる。
―SIDE CORE(『SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット』のためのテキストより抜粋)
TaiTan:SIDE COREも暗渠についての作品がありますし、今回の個展のステートメントも地下水脈の描写から始まりますよね。僕も暗渠や停波帯のような、そういった都市の中で止まっているものや用無しとされているもの、幽霊的なものに関心があり、介入したいと思ってきました。
