ハチミツ芸人8組がお笑い界のトップになるべく、話題になりそうなことに全力でチャレンジしていく芸人総合バラエティ『深夜のハチミツ!! Bee The TOP』通称『深夜のハチミツ』。数々の人気番組を輩出してきたフジテレビ深夜のお笑い番組の最新形だ。
ハチミツ芸人と新進気鋭のアーティストがそれぞれタッグを組み、「タオルをブンブンしたくなる曲」というテーマで楽曲を制作する「メジャーデビュー争奪戦!ハチフェス」が始動した。TikTokの再生数と、8月25日にお台場冒険王の特設ステージで行われるライブパフォーマンスへの観客投票をもっとも集めたユニットはソニーミュージックから正式にCDデビューすることができる。
ここでは8組による、「音楽×お笑い」の化学変化を記録するために対談連載を実施。今回は芸歴3年目の俊英である千年ぶりと、4人組ボーカルユニットのvövに語ってもらった。
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相思相愛のマッチング
ーこの企画に参加することが決まったときはどう思いましたか?
時央(千年ぶり):すごい企画がはじまったなと。僕らは歌の経験はないんですけど、ちょっと自信はあるんです。この企画を聞かされたときにみのるが「時央(ときお)、これいけるぞ」って、見たことない顔で言ってました。
みのる(千年ぶり):言いました(笑)。自信があったのは本当で。芸人をやっていく上で、お笑いはもちろんですけど、音楽系の仕事もやりたいと思ってたんです。アーティストさんと一緒に曲を作れるって聞いたら、まずテンション上がりました。ワクワクしてます。

1999年4月8日生まれ、兵庫県出身のみのると1998年6月19日生まれ、千葉県出身の時央記念日からなる吉本興業所属のお笑いコンビ。2022年4月NSC大阪校に45期生として入学し、NSC在学中にM-1グランプリ3回戦進出。2023年4月からは『深夜のハチミツ』(フジテレビ系)にレギュラー出演し、現在は、大阪を拠点に活動中。細かなマイムを駆使した緻密な漫才に定評があり、みのるは書道家としても活動する腕前。時央記念日は謎解き / クイズにも造詣が深く、幅広い活躍が期待できるコンビ。
時央:『クイズ!ヘキサゴン』とか『ワンナイR&R』とか、バラエティ番組と音楽って切っても切り離せないものだと思うんで。特にフジテレビですから。
みのる(千年ぶり):こういう音楽系の企画は最近見ないなと思ってたんで、もしメジャーデビューできたらニュースターになれるんかなという期待がありますね。
kaitö(vöv):僕はドキドキワクワク、ちょっと不安みたいな感じでした。企画内容自体はすごく面白いと思いつつ、お笑い芸人さんに強いリスペクトがあるので、そちらのフィールドにお邪魔させていただく以上粗相がないようにというか。お互いが持っているものをいかに掛け合わせられるかも重要ですし。ワクワクはずっとしてますね。
rëiji(vöv):どんな方とやれるのか楽しみでしたね。いざ千年ぶりさんに会ってみたら、すごくいい人たちでした。
ーちなみに、このマッチングは希望通りでしたか?
みのる:僕らはvövさんが第1希望だったんで、うれしい限りでした。
kaitö:僕らも圧倒的に千年ぶりさんでしたね。

2020年、コロナ禍に結成された音楽グループ。kaitö (Composer / Vo / Cho)、kaïyo (Vo / Cho)、äoi (Vo / Cho)、rëiji (Vo / Cho)4名からなるユニット。コンセプトは『音を楽しむ』。 メンバーのkaitöとrëijiは実の兄弟で、弟kaitöの呼びかけにより各々音楽活動をしていたメンバーが集結。ジャンルに囚われず、常に新しいサウンドやリズムを追及し続けている。
時央:すごくないですか? 僕らの間にはでっかいハートが出来ていますよ。空気感もすごく合いますし。
みのる:昔からの友達やったかな、くらいの。
時央:最初の顔合わせでvövさんが住んでる家にお邪魔したときから同級生みたいな感じになりました。
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お笑い好きのミュージシャンと音楽好きの芸人
ー同世代感がありますよね。見てきたものも近いのかなと思いますが、千年ぶりさんは普段どんな音楽を聴いてるんですか?
時央:僕は名前が時央っていうんですけど、母親がジャニーズ好きで、TOKIOさんからいただいてるんです。だからそういったJ-POPも聴きますし、井上陽水さんとか、安全地帯さんとか、昭和歌謡もめっちゃ好きです。
みのる:僕も玉置浩二さんがめっちゃ好きで、そこは時央とちょっと似てるかも。洋楽だとアリシア・キーズとか、古いのだったらマーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーとか。最近の音楽だと、back numberもよく聴きます。vövさんの曲もすごく好きでした。
ーvövのみなさんはどんなお笑いを見ていますか?
kaitö:äoiくんはすごくお笑い好きなんですよ。
äoi(vöv):千年ぶりさんのことはこの企画で初めて知ったんですけど、YouTubeチャンネルの動画は全部見ました。その上でちゃんと好きだなって。
時央:そんなにうれしいことないですよ!

äoi:参考に歌声を聴かせてもらっていて、すごくいい声だなと思ってたんですけど、もちろん芸人さんはそっちが本領じゃないので。動画で千年ぶりさんのお笑いを見て、ちゃんとファンになりました。初対面のときもYouTubeのネタをたくさん言っちゃって(笑)。
みのる:「時央さんって鍋嫌いなんですよね?」って言ってましたもんね(笑)。
äoi:みのるさんは、ネタの中で「大人や!」って言う場面があるんですけど、すごくいい声なんですよ。
みのる:いい声じゃなくて、面白いって言ってくださいよ!
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千年ぶりの芸人人生を反映した楽曲
ー今回の曲は他のvövの曲と比べてポジティブな要素が強いと思うんですが、どういう部分から発想したんですか?
kaitö:芸人さんとやる以上、歌詞に関してはポジティブなものにしようと考えていました。普段の僕らだったら歌わないことを歌える機会ですし。芸人さんの「板の上に立つ」という表現がすごく好きなんですよ。千年ぶりさんが芸人になるきっかけなどを踏まえた上で、「板の上に立つ」ということを歌ってほしくて。ただ、あまりにも熱すぎるとはじめて聴く人には伝わらないものがあるので、ポップなメロディーを心がけました。
今日が最悪の日でも
答えなんてなくても
また明日も俺らどっかの
板の上に立つから

ー芸人としての人生を反映させているんですね。
kaitö:やっぱり歌う人間の熱量が届かないと、タオルを回すにしても義務的になっちゃうと思うんですよね。それだと意味は生まれないかなと。逆に、引っ込み思案でタオルを回すのが恥ずかしい人でも、歌う人の心が乗っていれば届くと思うし。そこは、音楽の持つパワーを使いたいなと思いました。
みのる:聴いたときに、お世辞じゃなく「この曲好きだな」と思ったんですよ。シンプルに、ずっと聴いていたい曲だなというのが第一印象で。
時央:歌詞もメロディーも、聴けば聴くほどめちゃくちゃ良いんですよね。
みのる:芸人だからこそ歌える曲なので、『ハチミツ』のテーマソングにふさわしいなって。僕らだから歌えるというか。

ー千年ぶりの芸人人生のディテールを聞くことで曲に体重が乗るというか。
kaitö:誰に対して歌いたいかによって、曲の内容が変わると思うんですよ。お笑いをやる理由とか、成功した自分の姿を、誰に見てほしいかとか。芸人さんによっては一緒にいるパートナーだろうし、家族かもしれないし、友達かもしれない。そこにできるだけ寄り添うことを意識しました。
ーkaitöさんから最初のデモを送られてきてからは、どのような流れで曲ができていったんですか?
時央:さらに2時間くらいリモートでもっと深いことを話しましたね。その感想をLINEで送って、また話したり。ちょっとずつ僕らのことを知ってもらいました。

ー普段からkaitöさんが一人で曲の基本的な部分を作るそうですが、ボーカルが2人増えたことでアレンジは難しくなりましたか?
kaitö:コンセプトをしっかり決めてから臨んだので、そこまで難しさはないですね。お2人の声をできるだけ立たせたいので、僕らはそれを踏まえた上で入っていくというか。2人が目立つポイントを作って、僕らが味付けしたという感じです。
kaïyo(vöv):歌詞を見たときからこの企画にぴったりだなと思って。2人の声がすごく良いから、間違いなく良い曲になると思いました。
äoi:実際に歌ってもらったら、想像を超える部分もあってびっくりしました。やっぱり芸人さんならではというか、言葉に乗っかる熱量がとんでもないんですよ。泣きそうになるくらい響きました。kaitöが書いた曲と歌詞があってこそだし、この相乗効果はすごいなと。
rëiji:お2人をどうやって色付けするかという作業が楽しかったですね。4人だけでやるのとはまた違うので。
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「気が狂ってる」熱量が共通点
ー一緒に曲を作ってみて、ネタ作りとの共通点はありましたか? それとも全く別物でしたか?
時央:僕らがネタ作りで一番時間がかかるのは、言葉選びなんですよ。10文字に3時間かけることもあるので。その言葉や詞を大切にする感じは似てると思いました。逆に、僕らは2人でネタを作っているので、全然違うところで何かが出来上がっていくのははじめての体験でした。しかも、すごく良いものができてるというのが心強くて。
みのる:日常から切り取っていくというのは一緒だと思いましたね。みなさんが想像しているものに対してフリとオチを作っていく作業なんですけど、「共感するものを作る」という意味では一緒なのかなと。リズムとかテンポが重要なところも似てると思います。
kaitö:会話の中で出てくる単語が、僕らだったら出てこない言葉なんですよ。みのるさんが高校生のときに作ったという曲の歌詞が、「朝ぼらけ」からはじまるんですね。これはすごいセンスだと思って。
みのる:一番恥ずかしい!
時央:まだ芸人になってないときに作ってるしね(笑)。
kaitö:そういうところが芸人さんとミュージシャンは全然違うなと思います。共通事項は、いい意味で気が狂ってるところ(笑)。芸人というものに人生を捧げてるところが見える瞬間は、こっちも熱くなれるので気持ちいいです。
