グレッグ・アラキ監督の代表的2作品がデジタルリマスター版でリバイバル公開決定。『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』が11月8日(金)より、『ノーウェア デジタルリマスター版』が11月15日(金)より、東京・渋谷のホワイトシネクイントほかにて全国順次公開となる。
グレッグ・アラキは、異性愛を常識とする当時の概念や、それを支えてきた映画のあり方に対抗した1990年代の「ニュー・クィア・シネマ」ムーブメントを牽引し、インディーカルチャーの旗手として知られるアメリカの映画監督。2010年には『カブーン!』でカンヌ国際映画祭のクィア・パルムを受賞している。
『ドゥーム・ジェネレーション』(1995年)は若いカップルのジョーダンとエイミー、そこに加わった流れ者グザヴィエの、サイコや変人が溢れるアメリカを巡る悪夢のような逃避行を描いた作品。一貫してティーンエイジャーを主人公に同性愛者のリアルライフを描いてきたグレッグ・アラキは同作について、プロデューサーからの「異性愛映画を撮ったら制作予算をあげよう」という提案に対し、彼なりの反骨精神あふれるパンクなやり方で、「表向きは異性愛映画としつつも、史上最もクィアな異性愛映画を作りたかった」と語っている。劇中歌には、PIZZICATO FIVE、Nine Inch Nails、Slowdive、The Jesus and Mary Chain、Cocteau Twins、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)、The Verveなど、音楽ファン歓喜のアーティストが名を連ねている。
『ノーウェア』(1997年)は混沌とした世界で永遠の愛をもとめて彷徨う若者たちの明るくも悲劇的な一日の様子が描かれた作品。謎のエイリアンが街に出現し次々と異変が起きるロサンゼルスを舞台に、まるでジェットコースターのようなスピード感で若者たちが「終末の日」を過ごす。劇中歌にはSlowdive、Massive Attack、Sonic Youth、The Chemical Brothers、Blur、Portishead、Marilyn Manson、Radiohead、Suedeなどのシューゲイザーやオルタナティブロックの名だたるミュージシャンたちが楽曲を提供している。
この2作品に『トータリー・ファックト・アップ』(1994年)を加えた3作品は「ティーン・アポカリプス・トリロジー」と称され、いずれの作品もティーンエイジャーの若者たちを描いている。その理由についてグレッグ・アラキは「ティーンエイジャーの映画を作るのが好きなんだ。彼らの『ホルモンが狂った生活』には、忘れられない高揚感がある。彼らは1日に10回生きては死ぬような興味深い題材であり、私がこの世界について感じていることを体現している」と語っている。また同時に、自身の映画を「アウトサイダー、パンクス、クィア、社会やコミュニティに馴染めない人たちのためのもの」と位置付けている。
なお、今回公開されるデジタルリマスター版は、そのストレートな性表現から初公開当時は⽌むなくカットされたシーンを含むディレクターズカットで上映される。
『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』
監督・脚本・編集:グレッグ・アラキ
出演:ローズ・マッゴーワン、ジェームズ・デュバル、ジョナサン・シェック
製作:グレッグ・アラキ、ニコル・アルビブ、アンドレア・スパーリング
1995年/アメリカ・フランス/カラー/ビスタ/5.1ch/英語/84分/
日本語字幕:佐藤南/原題:The Doom Generation/
映倫区分:R-15+
配給:パルコ 宣伝:パルコ、SUNDAE
©1995 UGC and the teen angst movie company
<ストーリー>
ロサンゼルスのクラブでの狂乱の夜を終え、若いカップルジョーダン・ホワイト(#ジェームズ・デュバル)とエイミー・ブルー(#ローズ・マッゴーワン)が車で愛し合っていると、暴漢に襲われたハンサムで危険な流れ者グザヴィエ・レッド(#ジョナサン・シェック)がフロントガラスに飛び込んでくる。急いで車を出し彼を助け出すが、グザヴィエは感謝の素振りがなく、エイミーは嫌悪感を抱いていた。しかし、途中立ち寄ったコンビニで店員とトラブルになり、グザヴィエが揉み合いの中で店員を殺してしまうと、彼らは共犯者として一緒に逃亡を余儀なくされる。道中、エイミーをなぜか過去の浮気相手と勘違いする男など、暴力的でサイコな人間達に出会う悪夢のような逃避行を続けるが、エイミーは徐々にグザヴィエに性的な魅力を感じ始め、ジョーダンを含む彼らの三角関係に変化が起きていく。
『ノーウェア デジタルリマスター版』
監督・脚本・編集:グレッグ・アラキ
出演:ジェームズ・デュバル、レイチェル・トゥルー、ネイザン・ベクストン、キアラ・マストロヤンニ、デビ―・マザール 他
製作:グレッグ・アラキ、ニコル・アルビブ他
1997年/アメリカ・フランス/カラー/ビスタ/英語/5.1ch /83分/
日本語字幕:⻑ 夏実/原題:Nowhere/映倫区分:R-15+
配給:パルコ 宣伝:パルコ、SUNDAE
©1997. all rights reserved. kill.
<ストーリー>
クィアでカオスでロマンチック
真実の愛を求めて街をさまよう若者たちの青春群像
「世界の終わり」と「真実で永遠の愛」を見つけることに夢中の孤独な18歳の青年ダーク・スミス(ジェームズ・デュバル)は、自分の死の瞬間を記録するためにいつもカメラを抱えている。恋人のメル(レイチェル・トゥルー)は彼のことを深く愛しているが、恋人をひとりに絞ることができず、紫色の髪が特徴的なルシファー(キャスリーン・ロバートソン)とも愛を深めている。一方ダークも、美しい目をもつ青年モンゴメリー(ネイザン・ベクストン)に心を惹かれ始める。カフェが皆のたまり場で、ダークの親友でクィアなバンドマンのカウボーイ(ギレルモ・ディアス)がバンド仲間のバート(ジェレミー・ジョーダン)のことを悩んでいたり、女子3人組がスイーツの早食い競争をしながらガールズトークを繰り広げる。そんな中、ダークの周りに奇妙なことが起こり始める。レーザー銃をもった緑色のエイリアンが現れ、道端の女性を一瞬で消してしまったり、モンゴメリーも忽然と姿を消してしまう。心配しつつもダークは、その日の皆の最終目的地であるパーティーに参加するが、ダークの心はさらにかき乱される事となる
――色鮮やかな街で、目紛しく過ぎるダークの一日は、一体どんな“終末” を迎えるのか。