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息子が語る父「ボブ・マーリー」の真実。36年という短い生涯をかけて伝えた『ONE LOVE』

2024.4.30

#MOVIE

映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』(原題:Bob Marley: One Love)が5月17日(金)より全国公開される。日本に先立って2024年2月14日に公開されたアメリカでは全米週末興収ランキング2週連続1位を獲得。イギリスとフランスでは2018年公開の『ボヘミアン・ラプソディ』を超える公開初日興収を記録したほか、ボブ・マーリーの母国ジャマイカでは、公開初日の史上最高興収記録を塗り替えるなど、世界各地で大きな盛り上がりを見せている。

全世界で7500万枚以上のアルバムを売り上げ、没後には2001年のグラミー賞で特別功労賞生涯業績賞を受賞、「Hollywood Walk of Fame」への殿堂入りなど多くの偉業を残したジャマイカ出身のボブ・マーリー。なかでも、1977年リリースのアルバム『Exodus』の収録曲で、没後の1984年にシングルとしてもリリースされたボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの楽曲”One Love/People Get Ready”は、カフェやバーなどでその名を知らずとも聴いたことある人は多いだろう。同作は、そんなボブ・マーリーの代表作とも言えるアルバムが制作された時期に焦点をあてた作品で、ボブ・マーリーの妻のリタ、息子のジギー、娘のセデラがプロデューサーとして同作の監修に参画している。

”One Love/People Get Ready”では、<One Love / One Heart / Let’s get together and feel alright(愛はひとつ、心をはひとつ、みんなで一緒に幸せになろう)>というピースフルなメッセージを歌うボブ・マーリーだが、同時期のジャマイカの国内状況は、政権を争う二大政党が対立し内戦寸前。ボブ・マーリーもその人気ぶりからプロパガンダに利用されかけた上に、武装集団に銃撃されるなど波乱の連続だった。それでもボブ・マーリーを突き動かしたのは「他人を思いやる気持ちだった」と息子のジギー・マーリーは語る。息子としてボブ・マーリーの教えを受け継ぐ彼の思いを聞くなかで見えてきたのは、不寛容と分断の時代に今一度必要な「ONE LOVE」という哲学だった。

※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

「レゲエの神様」ボブ・マーリーが身の危険を冒してまで伝えようとしたこと

写真 © 2024 PARAMOUNT PICTURES
ジギー・マーリー(ZIGGY MARLEY)
本名デヴィッド・マーリー。ボブ・マーリーと妻・リタの長男として1968年に生まれる。幼いころから父親のボブ・マーリーにギターやドラムなどの楽器を習い、10歳のころにはボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのライブやセッションに参加。ジギーという名前は敬愛するデヴィッド・ボウイから付いたニックネーム。1988年には、トーキング・へッズのクリス・フランツらをプロデューサーに迎えた名作『Conscious Party』を発表。さらに翌年リリースした”One Bright Day”では、グラミー賞を獲得。03年ジギー・マーリー&ザ・メロディメイカーズとしての活動を終え、ソロ作を発表。また、非営利団体のU.R.G.E(Unlimited Resources Giving Enlightenment)というも活動も行っている。

ー最初に、ボブ・マーリーの映画を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

ジギー・マーリー:ボブ・マーリーの映画を作るふさわしいタイミングだと思ったんです。これまでにも彼に関する映画は発表されてきましたが、家族として、彼の息子として、父親ボブ・マーリーの「オフィシャル」な自伝的作品を作る役割をずっと感じていて、5年ほど前からスタジオに入り制作を初めました。

この映画には、彼のアーティストとしての生活や一人の人間としての人生など、さまざまなレイヤーがありますが、コアにあるメッセージは「団結」です。それがボブ・マーリーが生涯を通して伝えようとしたメッセージであり、この映画のメッセージでもあります。

ー「LOVE&PEACE」というメッセージはもちろん、カリブ海の小さな国の1人の声が世界を変えたストーリーでもあり、「不可能はない」というメッセージも感じられました。

ジギー・マーリー:この映画にはたくさんのメッセージがあって、見る人によって受け取り方が変わる作品だと思います。スピリチュアルでもあり、ピュアなラブストーリーでもある。ボブ・マーリーの生い立ちやアーティストとしての功績を知る方法は他にいくらでもありますが、この映画が描いているのは、ボブ・マーリーの一人の人間としての苦悩や、私の母であるリタ・アンダーソンとのラブストーリー。シンプルな恋愛映画でもあり、「LOVE&PEACE」というメッセージを伝える映画でもある。何を受け取るかはオーディエンス次第なんです。

写真左から、リタ・マーリー役のラシャーナ・リンチとボブ・マーリー役のキングズリー・ベン=アディル

ー今作はボブ・マーリーの人生を通して「LOVE&PEACE」というメッセージを伝えることに焦点を当てた作り方で、『ボヘミアン・ラプソディ』のようにアーティストの生涯を描いた自伝的映画作品とはアプローチが異なるように感じました。

ジギー・マーリー:その通りです。メッセージを伝えることが何よりも大事なことでした。だからこそ、ボブ・マーリー銃撃事件があった1976年からロンドンでの生活を経て、『One Love Peaceコンサート』が開催された1978年の間に焦点をあてたんです。たった2年の間に、彼は人生の目的や価値観が大きく変わる経験をした。そして、彼の存在そのものが「LOVE&PEACE」というメッセージになった。そんな波乱に満ちた期間を描く映画にしたかったんです。

ー家族と焚き火を囲んでボブ・マーリーが弾き語りをするシーンが印象的でした。音楽がノンバーバルなカルチャーであることも、ボブ・マーリーの世界的な人気に貢献したかと思いますが、彼にとって音楽はどのような存在でしたか?

ジギー・マーリー:ボブ・マーリーにとって音楽は人生そのものでした。ギターを片時も手放さず、呼吸するようにギターを弾いていた。サッカーも好きだったので、いつもギターとサッカーのことばかりの人でした。私や私の子どもたちも影響を受けていて、音楽とサッカーが大好きです。

ボブ・マーリーは人のために生きた人

ーとあるシーンで「役に立つ / 有益な」という意味の「Beneficial」と言っているボブ・マーリーが印象的でした。自分よりも家族や他人をいたわる旨の発言で、これまで楽曲でしか彼を知らなかった自分にとって新鮮でした。父親でありアーティストのボブ・マーリーを改めてどのように形容しますか?

ジギー・マーリー:いつも人のためを考えている人でした。自分よりも他人を労わる。自分のために生きた人ではなかった。自分のことを顧みず「人のために生きる」と宣言できる人はどれくらいいるでしょうか。それは、息子として父から教わったことでもありました。

ーご自身もボブ・マーリーのように「人のために生きること」を意識していますか?

ジギー・マーリー:意識しているし、尊敬もしているけど、彼ほどではないです(笑)。彼ほど振り切ることは自分にはできないかもしれない。でも、ボブ・マーリーは自分が持ちうる以上のものを人に与えようとした偉大な存在。だからこそ、死後もなお、彼が残したメッセージには影響力があります。父のメッセージを後世に伝える役割を担えて誇りに思っています。

ーなぜボブ・マーリーはそんなにも慈悲深い人だったのだと思いますか?

ジギー・マーリー:「人のために生きることが自分の人生の目的」だと彼は悟ったんです。人間として次元の違うレベルに達していた。生きている限り人生は進化の連続です。私もそう。36年という短い生涯では、悠長に待っている時間なんてなかったかもしれない。実際に彼の心境にどんな変化があったかはわかりませんが、早い段階で悟りの境地にいたんだと思います。

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