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プロデュース×脚本×演出×音楽の奇跡的な融合

本作はスタッフの体制も興味深い。プロデューサーからして、『ストロベリーナイト』(2013年~)、や『コンフィデンスマンJP』(2018年~)などで警察組織や、警察と対立する犯罪組織を描いてきた成河広明と、報道記者出身という異色の経歴を持ち、『ほんとにあった怖い話 25周年スペシャル』などを手掛けてきた大野公紀という組み合わせが、驚くほど『全領域異常解決室』という作品そのものだ。そして脚本は、『グランメゾン東京』(2019年)以降、『危険なビーナス』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『マイファミリー』『ラストマン-全盲の捜査官-』と5年連続でTBS日曜劇場の脚本を書き続けてきた黒岩勉。2008年にフジテレビヤングシナリオ大賞で佳作を受賞した後にデビューをしているが、そのデビュー作たる『世にも奇妙な物語~2009秋の特別編~』では、成河広明プロデューサーが企画を担当していた。その後、『絶対零度~特殊犯罪潜入捜査~』『ストロベリーナイト』でもタッグを組んでいるので、そのつながりは深いのだろう。
メイン演出は『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』『ストロベリーナイト』の他、『リーガル・ハイ』などの人気ドラマを手掛け、そして最近では、映画『変な家』(2024年)の監督も務めた石川淳一。なんと、黒岩のデビュー作である『世にも奇妙な物語 2009年 秋の特別編』でも、黒岩脚本の『自殺者リサイクル法』とは別の作品(『呪い裁判』)だが、演出を担当している。『全領域異常解決室』が、成河広明と大野公紀と黒岩勉と石川淳一という組み合わせだからこそ生まれたのは間違いないだろう。
そして、本作に、過去のどのドラマとも違った印象を与えているのは音楽ではないだろうか。担当するのは、作曲家 / 編曲家 / サックス奏者の小西遼。CRCK/LCKSのリーダーである一方、Mrs. GREEN APPLEやKing & Princeなどの有名ミュージシャンの楽曲におけるサウンドプロデュースを務め、MILLENNIUM PARADEやCharaなどのライブではサックスだけでなくマルチ奏者として活躍してきた。過去には、映画『ザ・ファブル』(2019年)、ドラマ『お耳に合いましたら』(2021年)で劇中音楽の一部を、そして、Amazon Originalドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』では劇伴を担当しているが、地上波のドラマの音楽を全て担当するのは初。最近の地上波ドラマでは珍しく、豪華なオーケストラを起用した音楽は、壮大で迫力があり、各場面を際立たせている。
TOMOOによるエンディングテーマ”エンドレス”もまた、小西による編曲。音楽担当だけでなく、エンディングテーマにも関わることは、映画では当たり前のようにあるが、ドラマとしては珍しいことではないだろうか。様々なジャンルを越境して活動する小西だからこそなし得たことなのかもしれない。