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カルチャーが自分の心を理解する手助けになる
ー23歳は激動に揉まれながらも、自分を受け止められたターニングポイントみたいな時期でもあったんですね。理想を追い求めて苦しんでいた当時の自分に「何をやらなくてもいいのかってことがだんだんわかってくる」と手紙で書かれていましたが、やりたいこととやらなくてもいいことの線引きは案外難しいと思うんです。どのように線を引けるようになりましたか?
あらゆる分野への興味は尽きず、誘われたらやってみて自分を試して、東京で輝いて見えるたくさんの人に憧れて。何をやらないといけないかっていう自己実現チェックリストが見えてきた頃かもしれないね。でも、これからあなたは、何をやらなくてもいいのかってことがだんだんわかってくる。
ゆっきゅんの手紙抜粋(「#あの頃の自分に届けたいコトバ」supported by FRISK より)
ゆっきゅん:私はノートにいろんなことを書くんですけど、書き始めの表紙側のページって後ろ盾がないから書きづらいじゃないですか。たとえば左開きのノートだったら、「右ページに書くのはこんなに楽しいのに、左ページに書くのはすごく嫌だな」って感じていたんです。
でもあるとき、私よりもちゃんと生きていると思っている友達が、ノートの右ページにだけ書いていたんですよ。それを見て、やっちゃいけないことってないんだと、胸を打たれました。左ページにも書かなきゃいけないと思っていた自分が、その瞬間に過去になって、自由を手に入れたんです。他人から見たら、私も着たい服を着て自由に生きているように見えているかもしれないけど、自分の中にはまだまだやらなきゃいけないと勝手に思い込んでいることが多いんだって気づいて。
たとえば大学院生のはじめくらいまでは、とにかくたくさん映画を観たり、映画本を読まなきゃいけないと思っていた。でもそもそもやらなきゃいけないことをやるのが苦手なので、それもできないんですよ。それでもっと純粋に自分のやりたいことを考えたときに、私が好きなのは映画だけじゃない!ってことを思い出して、漫画を読んだりして、自分を取り戻す経験をしました。『NANA』とか。

ーおもしろい! 純粋だった自分を取り戻すことって、自分が好きだったものや、今の自分が好きなものを見つけるうえですごく大事なアクションですね。4月は多くの人たちが新しいスタートを切らなくてはいけないと感じる時期だと思います。でも、好きなことを見つけられていない人や、気づいていない人たちもたくさんいる。そんな人たちにどんなメッセージを贈りたいですか?
ゆっきゅん:私は好きなものがとにかくたくさんあったんですけど、その中でやりたいことがはっきりし始めたのは26歳とか。大学を卒業して、自分のやりたい音楽でやっていくとなると、当時はまだ実力も知識も、自分が何に向いているのかの理解も足りなかった。だから時間が必要だったんですよね。
その時期を経て、私の言葉の本体は心だから、一番大切にしたいのは自分の心だなって思ったんです。そこに辿り着くまでにも、いろいろ試してみないとわからなかったなと思います。なので、もがいているならそれでいいし、本当に焦る必要はない。そう言われて「じゃあ焦りません!」ってなるような人間だったらどれだけ楽かって話だよな! でも、今感じていることを感じていたら、それでいいと思います。
あなたは自分以外の人間を諦めることで、やっと、研ぎ澄まされた自分になる。あんな風になれないってことが悲しくても、それがあなたの素晴らしいところに決まっている。こうしかできないあなたを生きるしかない。そしたらもう、自分のやるべきことが、はっきりとわかるよ。でもそれはあなたがこれまで自分を試してみたからわかることで、今誰に何を言われてもピンとこないだろう。
ゆっきゅんの手紙抜粋(「#あの頃の自分に届けたいコトバ」supported by FRISK より)
ー今自分が何を感じているのか、何を思っているのか、今の心を見つめるということは、若い人たちだけでなく、誰しもが常にやっていけるといいことですね。
ゆっきゅん:でも、難しいですよね。自分の気持ちを正確に言葉にすることって、すごく頑張らないとできないと思います。私はよく、そのときの気分に合わせてプレイリストを作っていました。自分の気持ちを言葉にできなくても、「今はこれしか聴けない」みたいなものでも自分を理解できるし、納得に繋がる。カルチャーってそういうときにすごく助けになる気がするんですよね。