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「私のための作品」だと思えたものがなかったから、たくさん探す必要があった
ー大学で地元の岡山から上京されたと思うんですけど、上京しようと思ったきっかけを教えてください。
ゆっきゅん:高校生ぐらいになると、興味ないことは全然できないということに気づき始めていて。でも、好きなことや知りたいと思うことはたくさんあるから、それらを学べる学科を熱心に調べて、関東の大学に行くことに決めたんです。
当時はTwitter(現:X)が盛り上がり始めていて、岡山県以外の場所の流れを見ていました。例えば、東京のポレポレ東中野で自主映画が上映されて、たくさんの人が集まっている様子をTwitterを通して知っても、岡山県じゃその映画は観れないんですよね。アイドルも大好きだったんですけど、ツアーでも来ない。そういう限界を感じていたのもあって、東京に行きたいという気持ちも膨らんでいました。なので、自分の夢を叶えるために上京してきたわけではなくて、観れないものがあることがしんどくて、もっと観に行きたいという気持ちでしたね。

ー幼い頃からテレビやインターネットを通して、自分の好きなものや知りたいことを探しながらも、オンラインの限界を感じていたんですね。
ゆっきゅん:その通りですね。アイドルがライブの告知をするんですけど、そもそも行けないから目に入らないんですよ(笑)。東京で開催されるイベントの情報は、自分に向けられていないものとして見ていた記憶があります。でも、東京に来たことで、受け取っていい情報が増えた感覚がありましたね。
ー当時、自分に向けられているなと思う芸術はありましたか?
ゆっきゅん:なくて、ずっと探していましたね。でも、私は疎外感を感じないパワー系ストロングスタイルの才能があって、どれだけ山戸結希が「女の子のために作った映画です」と言っても、「これは私のための作品だ」とはっきりと思うことができたんです。とはいえ振り返ってみると、心から「私のための作品」だと思えたものはなかったなと思います。だからたくさん観たり、聴いたり、調べなくちゃいけなかったんだと思うんですよね。
私みたいに感じてきた人が他にもいることは分かっているので、自分が何かを作ったり、発信するときには、実家に住んでいる10代の男の子のことをよく考えます。自分にとっては、そういう人に届くような活動ができていなかったら、何もやっていないのと同じ。そういう人たちが初めて「自分のための芸術を見つけた」と思ってもらえるような歌を歌えたら、他にやりたいことはないです。