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山中瑶子監督が語る『ナミビアの砂漠』。奇跡の縁を持つ河合優実との共作は社会との苦闘

2024.9.6

#MOVIE

作品タイトルに託したもの。安全圏にいる私たちの欺瞞に満ちたまなざし

―タイトルはなぜ『ナミビアの砂漠』になったんですか?

山中:構想となる地図を実際に脚本に落とし込んでいく段階で、河合さんが演じるカナという人物像があまり見えてこないなと感じるタイミングがありました。カナはいつも誰かと一緒にいるけれど、家に1人でいる時間は何をしてるんだろうと考えたときに、実際にYouTubeで配信されているナミビアの砂漠のライブ映像のこと、それを自分が見ていた時期のことを思い出したんです。

ナミビアの砂漠を移し続けるチャンネル。劇中、カナがこのチャンネルを見るシーンが複数回、登場する。

山中:それで調べていたら、あの映像に出てくる水飲み場が人工的なものだと知りました。国立公園が運営しているチャンネルなんですが、あえて言い方を悪くすると、動物をおびき寄せて我々に見せてくれているんだと思ったんです。

世界最古といわれている砂漠で、ナミビアとは「何もない」という意味らしいんですが、「めちゃくちゃ人工的な介入がここにまであるじゃん!」と驚いて。チャンネルの収益が還元されて、土地や動物たちが潤うのは良いことだと思うんですが、見ている私たちはいつでも手軽に安全圏から見ることができて、癒されている。そうした距離感のズレに社会の欺瞞のようなものを感じて、この作品とマッチしていると感じたんです。

―距離感のズレですか。

山中:カナは身近な友達や恋人は粗雑に扱うけれど、少し距離のある隣人や、医師の話は意外と素直に聞けるところがある。でもそれは普遍的なことだと思うんですね。親の言うことはすんなり受け入れられないけど、よく知らない人のアドバイスには耳を傾けてしまうとか。

そうした他者との距離感って、ナミビアの砂漠の配信を見てボーッと癒されるときに、フレームの外のことは考えもしないということと近いのではないかと思いました。無責任だからこそ、遠いところに思いを馳せられるのかもしれないなと。でもこれは私が勝手に考えたことなので、観た人は自由に楽しんでほしいとは思います。

カナ / 『ナミビアの砂漠』場面写真 ©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

―カナというキャラクターは生命力やエネルギーに溢れていて、タイトルも手伝って動物的な魅力のある人物にも見えました。

山中:世界に疲弊しているのに、感情が全身にいっぱい出ていますよね。私もカナが大好きです。

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