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山本奈衣瑠インタビュー 彼女がインディーズ映画の「ミューズ」になった理由

2024.11.25

#MOVIE

山本奈衣瑠が語る「東の今泉力哉、西の磯部鉄平」

―この取材は、『夜のまにまに』の宣伝のお時間をいただいていて、私もこの映画は大好きなのでお聞きします。個人的に、今の日本の恋愛映画の匠の人として、私はかねてから「東の今泉力哉、西の磯部鉄平」と勝手にキャッチコピーを作っているのですが、山本さんはお二人の映画で主演を務めているという稀有な存在です。お二人の演出の特性などは、山本さんしか語れないので、ぜひ、そこを強くうかがいたいのですが。

山本:うわ! 本当だ。これは、私が言わないと(笑)。そうですね。二人ともに共通するのは、面白い人間の描き方をわかっているところ。それこそ、今泉さんも、磯部さんも、彼らの育った環境だったり、これまで見てきた風景だったり、好きなものがスクリーンに反映されて、絶妙な面白さになっている。それがテンプレにならなくて、それぞれ、自分しか持っていない独特の空気感につながっている。そういう意味では、唯一無二の監督ですね。

でもね、だからといって、似ているわけじゃないんです。二人とも優しいんだけど、今泉さんの映画の重要なワードとして、「人としてのダメなところ」っていうのが彼の中にはあると思う。そのうえで、今泉さんは、一人でいる時の面白い時間をすごく知っている人という感じがする。で、ダメなところが、なぜ、ダメじゃないのかということも知っている。だから、出てくるキャラクターがみんな愛くるしく見えるんだと。脚本の書き方、撮り方でどうにでもなっちゃうところ、今泉さんならではのセンサーがあって、現場ではそれが揺るがない。だから、全ての作品に一貫しているところがあるんじゃないかな。

山本:インディーズ時代から、今泉さんの映画を見てきた方たちの中には、最近、その枠を超えて広くお仕事されているのを見て、何かが変わってしまうんじゃないかなと心配している方もいると思います。でも、私の感覚ですが、どこにいたって今泉さんの中にある大切な軸みたいなものは変わらないんだろうなと感じます。だから、毎回、うれしいし、安心する。今泉さんがいろんなジャンルの仕事をするっていうのは、一ファンとしてはむしろ、とても嬉しいと感じています。

で、『夜のまにまに』の磯部さんは、今泉さんよりもうちょっとふざけていて、遊びの感覚が強い。それは、大阪人特有の、人のダメなところを、俺もそうやねんと自虐も込めて一緒に笑うっていう感じ。だからって、別にバカにして笑っているわけじゃないんですよ。磯部さんはセンチメンタルで、ロマンチスト。一方、今泉さんはダメなところを描きながらも笑わないし、そこはすごくリアリストですね。その違いはすごく感じます。

―『夜のまにまに』で演じている佳純は、恋人の浮気を疑い、バイト先の年下の青年を巻き込んで、夜な夜な監視するような女性ですが、見ているうちに、実はもうダメだとわかりながらも、彼への執着を捨てきれない切なさも感じ、終わりたくないがために夜を彷徨っているように見えます。

山本:私も夜の時間をすごく大事にしてるんですよ。なぜ大事にするかっていうと、何をしていても、町中が静かで、今いる空間が自分しかいないっていう気持ちになれるから。私は美術が大好きなんで、画集を見たり、本を読んだりして、夜更かしをしながら自分だけの時間を満喫することが好きで、それは誰にも奪い取られない時間でもある。

山本:『夜のまにまに』で私が演じた佳純と、私が監視に巻き込む加部亜門さんが演じる新平の二人も、多分、誰にも奪われない夜の時間を大切に共有していると思うんです。あの二人は、この映画の後、もしかしたら一生会わないかもしれないけれど、それでも、誰にも取られない二人の時間が自分たちの記憶の中にずっと存在する。そのことが、この映画の大好きなところです。

『夜のまにまに』

公開:2024年11月22日(金)
監督:磯部鉄平
出演:加部亜門/山本奈衣瑠/黒住尚生/永瀬未留/辻凪子/岬ミレホ/木原勝利/日永貴子/川本三吉/時光陸/大宅聖菜/辰寿広美 / 緒方ちか 他
配給:ABCリブラ
2023年製作/116分/G/日本

オフィシャルサイト:http://bellyrollfilm.com/mani/

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