INDEX
ファムファタルでも、悪女にはなりたくない
―面白いのは、山本さんが演じる役柄は、彼女と出会うことで男性の日常をがらりと変えてしまうという点で、ファムファタル(運命の女)には違いないんですけど、悪女ではない。『SUPER HAPPY FOREVER』の凪も、『夜のまにまに』の佳純も、『冬物語』の大島も悪意はなく、むしろ男性側の好意を素直に受け入れる地に足の着いた女性なんですけど、でも、彼らの運命を劇的に変えてしまう。触媒みたいな役が続いていることをどう感じていますか?
山本:わっ、今、聞いていてなるほど、すごいって思っちゃいました(笑)。私は、俯瞰で物事を見るまで結構な時間がかかる人間で、自分が演じた役に対しても、あの子、ああいう面白い子だったよね、って外からの目で分析するのは撮影が終わってからだったりもします。自分の思うがままの性格で演じていて、こういうインタビューで出演作を語るときも、自分の記憶に近い感覚として残っていることを話すので、演じている間、登場人物の男性陣を振り回しているつもりは全然ないんです。むしろ、映画の中ではまっすぐに生きています。
―なるほど! 私は自分が30代だったときに、同世代の女性としての感覚を共有できる山本さんの出演作を見たかったなあとここ最近、ずっと感じているのですが、ご自身がまとっている同時代性についてはどう感じていらっしゃいますか?
山本:先ほどの話に近いですけど、何を演じても自分っぽさが出ちゃうから、イコール、今の時代と今の環境を生きている一人の女であるという時代性みたいなものが出るんだと思います。私はうまく感情をコントロールするのが上手なタイプじゃないと思うし、同時に脚本を読んだとき、これは役柄の設定だけじゃなく、私自分もする行動だと留意する部分や、ここは自覚をもって演じたいという部分に目が行くから、格別意識しているわけじゃないけど、そこが演技として表に出てしまうんだと思います。ただ、女性が主演の映画は増えていますが、異性の脚本家と監督がやりたいビジョンがもちろんメインにあるわけで。

山本:先程、ファムファタルのポジションの設定が多いと聞いて面白いなと思ったんですけど、私は女が何かのきっかけで男性の人生を暗転させるだけのポジションには陥りたくないし、そう見えるような演じ方はしたくないかな。悪い女に見えるような演じ方をしようと思えばできるような作品があるじゃないですか。でも、今の私は、それはしたくない。撮影が終わって、気づいてみれば、確かに悪女の要素はあったかも、と思うのならいいけど、脚本をもらった時に、この人ははなから悪女であるというふうには決めつけたくないというか。多分、日常で私が普段から気を付けたり、関心があるポイントに力点を置くから、悪女の表現にはならないってことなのかな。
