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映画『ウィキッド ふたりの魔女』レビュー 分断の時代に抵抗する魔法

2025.3.7

#MOVIE

『ウィキッド』の政治性

ところで、チュウ監督はインタビューにおいて、この映画の政治性を認めており、観客がドナルド・トランプ大統領再選後の文脈を反映して本作を見ることを受け入れている。

参照:Jon M. Chu Embraced the Politics of ‘Wicked’ and Audiences Seeing It Through a Post-Election Lens

『ウィキッド』では、言葉を話す動物たちが教育の現場から締め出され市民権を奪われつつあるなど、人々の偏見だけでなく、国による迫害についても言及される。そして、これに反発するエルファバも、タイトル通り「邪悪な(wicked)魔女」というレッテルを貼られてしまう。

自らと異なるグループをスケープゴートにし、共通の敵として排除しようとするオズの国は、現在アメリカで起きている移民排斥や反DEI(※)の動きとも重ねて見ることができるだろう。

※多様性(Diversity)、公正性(Equity)、社会的包摂(Inclusion)へ反対する考え方

前述した時計やエメラルドシティの壁と窓など、本作にはたびたび円形のモチーフが映し出されるが、それをエルファバが打ち破る描写や、壁の穴の上方が空いて筒状になり空が広がるキービジュアルなど、円とそれを崩すようなイメージも散見される。これは、差別が渦巻く閉鎖的な社会とその打破を暗に示しているのかもしれない。

そして、エルファバは、差別や迫害に抵抗する存在として立ち上がる。抵抗と自己肯定のアンセムとして、ミュージカルファンのみならず広く知られているのが”ディファイング・グラヴィティ”だ。直訳すると「重力をものともせず」であり、社会の重圧に抗い自由になることを歌っている。この曲は映画ではより長尺で流され、ダイナミックな演出とともに高揚感と解放感をもたらす必見のシーンになっている。

エルファバとグリンダの友情とオズの国の行く末はどうなるのか。本作で描かれた現代にも通じるテーマは、どのように帰結するのか。後編も今から楽しみでならない。

『ウィキッド ふたりの魔女』

3月7日(金)より全国劇場にて公開中

原題:WICKED
監督:ジョン・M・チュウ
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム
製作:マーク・プラット、デイヴィッド・ストーン
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:ミュージカル劇「ウィキッド」/作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ、脚本:ウィニー・ホルツマン
©Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://wicked-movie.jp/

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