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映画『ウィキッド ふたりの魔女』レビュー 分断の時代に抵抗する魔法

2025.3.7

#MOVIE

ふたりの魔女と差別的な社会

『クレイジー・リッチ!』では、外国での生活や異文化に疎外感を抱く主人公が家族と対立しながら成長していく様子が描かれたが、そこに表現されたのは、異なる背景をもつ者たちの衝突と共存だった。

『ウィキッド ふたりの魔女』は、対照的な背景を持つ2人の違いを現代的な仕方で浮き彫りにしながら、ミュージカル版と同様、疎外された他者への差別と偏見、抵抗といったテーマを表現している。

緑色の肌を持ち黒い衣装のエルファバは、人種のみならず、抑圧されたあらゆるマイノリティやアウトサイダーを象徴する存在だと解釈できる。その外見による疎外や排除が作中で強調されているだけでなく、その振る舞いも嘲笑され、彼女の持つ不思議な力は不気味がられている。

このエルファバ役を、ブロードウェイではイディナ・メンゼルが演じていた。映画で抜擢されたのは、アフリカ系でクィアでもあるシンシア・エリヴォだ。シンシアは、エルファバの役柄にアフリカ系女性としての自らのアイデンティティを強く結びつけようとした。マイクロブレイズの髪型や黒く長いネイルは、シンシアのアイデアだそうだ。

参照:シンシア・エリヴォ、『ウィキッド』エルファバ役のヘアスタイルとネイルに込めた特別な思い

一方で、アリアナ・グランデが演じるグリンダは、エルファバと正反対の特徴をもっている。グリンダの周りは淡いピンクと白で彩られており、陽気な人気者である彼女は、最初はある種の特権性を象徴する存在として描かれる。

さらに、この映画におけるグリンダの立ち振る舞いには、現代のセレブリティやインフルエンサー的な要素も付け加えられている。グリンダがエルファバの横に立ち、少し顔を傾けて斜め上を見るショットは、カメラを持っていないにも関わらず、まるでスマートフォンで自撮りをしているかのようだ。また、縦長の枠内に彼女を映した構図がいくつか見られるのも、そうした側面を強調しているように思える。

ある場面で、グリンダの無邪気さゆえにエルファバがあざ笑われ辱められるが、そこで感情を抑えて踊るエルファバを見て、グリンダは反省し2人の友情が培われていく。しかし、グリンダはその後も自己中心的な面を見せており、完璧な善人ではない。モラルと内面の成長が複雑に描かれるのも今作の特徴だ。

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