INDEX
『チェリまほ』『モコミ』など「心」を描いた作品が心に刻まれる理由

触れた人の心が読める魔法を手に入れた主人公を描いた『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系 / 2020年)や感情を持たないとされているモノの気持ちがわかってしまう主人公を描いた『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系 / 2021年)もそうだが、本来、見たり聞いたりすることができない「心」を描いた作品が、視聴者の心により深く刻まれるのはなぜだろう。
「人の嘘が聞き分けられる能力」を持つ鹿乃子は、「人と違う」ために人々から疎まれ、「人より人の内面がよく見えてしまう」から、人間の醜さや怖さを誰よりも多く目の当たりにしてきた。もしかすると、彼女が抱える生きづらさは、特殊能力を持たずとも世界と自分の感覚のズレを抱いてきた人にとっては、自分の話のように感じずにはいられないのではないだろうか。

世界は不安に満ちていて、人はいとも簡単に嘘をつく。誰かを信じることに臆病になった私たちが、それでも人を信じたいと思わずにいられないのはなぜだろう。騙されても、騙されても困っている人に手を差し伸べずにはいられない馨(味方良介)のように。それは、信じたその先に、鹿乃子が見たような光景があるからではないだろうか。気の置けない人々と過ごす楽しい時間。「一人じゃない」と心から思える唯一無二の人との出会い。ワクワクするような、はじめての体験。誰かと目と目を合わせて思わず笑ってしまうこと。そこには、それぞれに思いや事情を抱えた人々が一所に自然と集う理由が詰まっている。