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第10話冒頭の鹿乃子から左右馬に移る秀逸な演出

本作は、生まれ育った村の人々に疎まれ、「つらいことがあったら、いつでも帰ってきていいんだからね」という母・フミ(若村麻由美)の言葉に混じる嘘に気付きつつ、悲しい思いで村を出た鹿乃子が、九十九夜町に辿りつくところから始まった。賑やかな雑踏で、道行く人々の言葉の端々にも様々な嘘が混じり、知らない街は不安でいっぱい。そんな中、彼女の能力ごと鹿乃子を受け入れる左右馬に出会い、隣のお食事処「くら田」の倉田夫妻(大倉孝二、磯山さやか)をはじめとする居心地の良い人々に囲まれて、心穏やかな生活を送ることができるようになった彼女は、第10話で母に対する心のわだかまりも溶け、町の人々と左右馬の優しさで満ち満ちたクリスマスの一夜を迎える。
第10話冒頭において、母への手紙をポストに投函した後、第1話で、初めて彼女が祝探偵事務所に泊まった日の夜と同じように2階の窓から空を見つめ、母を想う鹿乃子。そんな鹿乃子の姿を映した後、カメラは彼女が見つめる空から舞い落ちる雪を映した。その雪の白は大きくなって、眠っていた左右馬の顔を覆っていた布の白に転じ、起床を促す鹿乃子の声とともに、2人のいつもの光景なのだろう朝食の様子に切り替わる。冒頭数分で、第1話から今までの道のりを思い出させる秀逸な演出だった。