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昭和ミステリードラマ『嘘解きレトリック』は「心」と「味覚」を描く

2024.12.16

#MOVIE

『嘘解きレトリック』©フジテレビ
『嘘解きレトリック』©フジテレビ

作品を優しさで満たす鈴鹿央士と幸せを願わずにいられない松本穂香の魅力

鹿乃子に嘘だと分かった時の目印を教える左右馬©フジテレビ
鹿乃子に嘘だと分かった時の目印を教える左右馬©フジテレビ

『嘘解きレトリック』が最終話を迎える。都戸利津による同名コミック(白泉社)を原作に、『ガリレオ』シリーズの演出・西谷弘と鈴木吉弘プロデューサーがタッグを組んで実写化したのが本作だ。脚本は武石栞、村田こけし、大口幸子の3人が担当している。

昭和初期の九十九夜町を舞台に、「人の嘘が聞き分けられる能力」を持っているために人々から疎まれ、孤独な日々を送ってきた鹿乃子が、貧乏探偵の左右馬に助けられ、探偵助手として受け入れられるところから始まった本作は、ミステリーであり、左右馬と鹿乃子の可愛らしいラブストーリーのようでもあり、孤独だった鹿乃子が幸せに包まれていく姿をただひたすらに描いた話でもある。

細部までレトロにこだわる『嘘解きレトリック』©フジテレビ
細部までレトロにこだわる『嘘解きレトリック』©フジテレビ

昭和初期を舞台にしているために、レトロモダンな町の光景や衣装は素敵で、第4・5話の「人形殺人事件」のように、横溝正史や江戸川乱歩の探偵小説を彷彿とさせる事件も多い(第9話における濱尾ノリタカ演じる徳田史郎は、名探偵明智小五郎の好敵手・怪人二十面相を思い起こさせる、ミステリアスな美しさだった)。2023年放送の『探偵ロマンス』(NHK総合)もそうだったが、昭和初期を描いた作品は、新たな「歴史ドラマ」の活路と言えることを実証するような作品だった。

ミステリー部分は『ガレリオ』シリーズ(フジテレビ系)のスタッフが手掛けただけあって上質で盤石であり、本作の重要なパートである美味しそうな食べ物と優しい町の人々の光景は、『みをつくし料理帖』(NHK総合 / 2017年)の多幸感を思い起こさせたりもする。

そして、なんといっても鈴鹿央士の良さである。『silent』(フジテレビ系 / 2022年)で「主成分、優しさ」と言われる戸川湊斗役を演じた彼の良さが存分に活かされている本作の左右馬役は、常にふわりと鹿乃子を包み込む。その温かく丸みを帯びた軽やかな声色は、時に本質を鋭く貫く芯の強さを感じさせながら、作品全体を優しさで満たしている。これまでになかった主人公の佇まいと言えるだろう。対する鹿乃子を演じる松本穂香は、表情一つ一つに繊細な心の機微を込める。気づいたら視聴者は、彼女が感じる幸せの欠片を一つずつ拾い集め、共有せずにはいられなくなってしまう。

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