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作家たちのB面に触れる『DIYステーション』
最後のセクションは丸ごと『DIYステーション』という作品になっている。この空間を手掛けたのは伊藤聡宏設計考作所とスタジオメガネ建築設計事務所だ。本展担当学芸員の藤岡氏(東京都美術館)はここを「これまで見てきた作家たちの、いわばB面が見られる場所」と表現していたが、それぞれの作家たちが来場者の行動を促すプチワークショップのような展示室となっている。各展示コーナーには展覧会ファシリテーター、愛称「つくるん」が専属のボランティアスタッフとしてついており、彼らにエスコートしてもらいながら鑑賞体験を深めてゆける親切設計である。

例えばダンヒル&オブライエンからのアプローチは、3種類の「マッシュアップ」の彫刻を収めた「触れて鑑賞する箱」だ。TVのバラエティ番組でおなじみの「箱の中身はなんだろな」のように、来場者は両手を突っ込んで形や質感を味わい、さらにそれを言葉にして誰かと共有することが推奨されている。筆者はひとりで参加していたので、ファシリテーターのお姉さんに聞き取り / 書き取りをしてもらった。

自分の表現力の乏しさに涙が出そうになるが、目に頼らずモノを描写 /形容するのは新鮮な体験だった。ちなみに、最後まで箱の中身は見られず、答え合わせは存在しない。自分で、納得できる答えにこぎつける。これもまたDIYである。

ここでは展覧会関連プログラムとして、アーティストたちの多様な「DIYLive」が開催される。写真はZINE(小規模な自主出版の本)を製作するワークショップの開催予定地。ワークショップで使用する道具や材料が並んだテーブルは、さながらクッキングスタジオである。
また、これは体験するタイプではないが、野口健吾のB面展示である『あるホームレスから譲り受けた手記』の公開が、非常に示唆に満ちていることを特筆しておきたい。政府の援助を受けず、自分でどうにかして生きていることへの誇りの滲む文章は、読み苦しいところもあれど『つくるよろこび 生きるためのDIY』にふさわしいものだと感じた。時間が許せばじっくりと読んでみてほしい。