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アーティストが左派サイドに多い理由
―「音楽に政治を持ち込むな」という声についてはどう思いますか?
寺田:音楽をやっている人たちが政治にタッチしちゃいけないなんて思っていないし、今のご時世――分断が進む時代だからこそもっともっと政治的なメッセージはアーティストから出てもいいのではないかと。それこそ『フジロック』の配信をずっと見ていて、やっぱり音楽にパワーを感じました。僕ら政治家が愛と平和だっていうよりも、サンボマスターが言ってくれた方が届くんですよ。政治にどんどん飛び込んでほしいというわけではないけど、もっともっと社会、政治に対するメッセージを、どっちサイドでもいいですけど、持ってくれた方がいいなと思いました。
―どっちサイドというのは、いわゆる右派、左派的なことですか?
寺田:アーティストは左派サイドに多いと思いますけど、それ以前に政治を敬遠する感じが日本にはあるので、興味を持ってもいいと思いますけどね。
ー知人のミュージシャンと話していて、なぜミュージシャンは左側の人が多いのか、という話になったんですよ。寺田さんも立憲民主ですから、どちらかと言えばそちらの方だと思うんですけど。
寺田:どうなんでしょう、所属政党の立ち位置と自分自身の本当の意味での主張がぴったり一致するわけじゃないですし、僕自身は真ん中だろうなとは思っています。
アーティストにリベラルが多いというのは、多様性に対する寛容さですよね。やっぱりアーティストである以上、自分自身の個性を周りが尊重するし、あなたの個性も尊重するというところにアーティストはあると思うので。
ーいわゆるリベラルと言われてる人たち、勢力がなかなか浸透しにくい世の中になっているなと。それは先日の参院選の結果からも明らかだと思います。この辺の原因というか、何でこうなってきたんだと思っています?
寺田:どのサイドや視点から考えるかによるでしょうけど、リベラルと自称する政党も含め、ちょっとお高くとまってきたんだと思いますね。多様性は素晴らしいんですけど、「多様性は素晴らしいんだ、君たちは分からないのか」という問いかけの仕方に、拒否感を感じて距離を置く人が増えてきてるんだと思うし、その一方では強い者と弱い者の差が広がってきている中で、誰かのせいにしたいという風潮につけ込む勢力が出てきたんだと思います。どういう時代であれ、リベラルというか多様性を大事にすることと、人それぞれを尊重することは大事な概念なので、その概念をうまく国民なり社会の中で共有できるように、したたかにやらなきゃいけないんでしょうけど、やはりちょっと大上段に、ものを分かったように言っている雰囲気が出ている気がしますね。そこに対して大きな隙が生まれて「リベラルなんて格好悪い、リベラルが言ってることはなんか偉そうだ」と、廃退の一途を辿っているような気がします。
ー僕ら国民の生活が苦しくなってる点も大きいと思うんですけど。
寺田:はい。どこの国も今、右傾化が進んでいて、それは誰かのせいにしながら自国民を守るのだ、というようなロジックがかなり広がっている話だと思うんです。そこはめげずに再分配も含めてちゃんとやって、どのような立場の人だって生きやすい世の中を目指していけば、分断を煽るような風潮が伸びていくことはなくなると思うんですね。政治がある意味敗北しているというか、機能していないからこそ、こういう政治が生まれてくる気がします。
