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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

タブーを恐れぬ異色の国会議員・寺田学。右傾化が進む時代に何を思う?

2025.8.20

#OTHER

ルチアーノ観たさにイビザ来訪、DJ NOBUと菅官房長官(当時)との面会を段取り、風営法の改正にも尽力。

その異色な活動で注目されている衆議院議員・寺田学に、自分の生い立ちと音楽遍歴から、混沌さを増す現状について、また、とかく日本ではタブー視されてきた大麻に関する議論について、率直に語ってもらった。

※本記事はスペースシャワーTVのアーカイブサイト「DAX」のインタビュー企画「My Favorite X」のテキスト連動版としてお送りします。

政治の世界を嫌悪していた学生時代

―音楽との出会いはいつ頃でした?

寺田僕が一番最初にCDを買ったのは小学校5、6年生ぐらいの時で、爆風スランプの『RUNNER』だったのは覚えてるんですよね。ただ、2つ離れている兄貴が結構洋楽を聴いていたんですよ。Led ZeppelinとかThe DamnedとかRamonesとか。そういう兄の影響もあって、『ダンス甲子園』とかかな……C+C MUSIC FACTORYか、あの辺の曲で洋楽の入り口に立って、音楽が好きになった記憶があります。

寺田学(てらだ まなぶ)
1976年(昭和51年)秋田県横手市生まれ。横手高校、中央大学を卒業後、三菱商事に入社し東南アジア諸国を担当。2003年、秋田1区から衆議院議員に初当選。現在、7期目。在職20年。立憲民主党。国会では財務金融委員会・外務委員会・法務委員会にて筆頭理事、政治倫理審査会筆頭幹事を務め、政府においては内閣総理大臣補佐官に二度就任(菅直人内閣、野田佳彦内閣)。菅直人内閣では東日本大震災に係る原発事故対応等を、野田佳彦内閣では社会保障と税の一体改革を担当した。ライフワークは、教育の多様化、性犯罪の撲滅、音楽(特にLive)の振興。特に音楽分野では、Live、フェス開催に関するアーティストの在留資格等の諸課題解決をはじめ幅広くサポートに励み、相談が絶え間なく寄せられるようになる。

―その当時、同級生で音楽の話をしていました?

寺田:してないですね。年が離れた上の兄弟がいる家は音楽聴いているけど、基本はテレビから流れている普通の邦楽を聴いてる感じかな。高校に入るとテレビの衛星放送で初めて渋谷陽一さんを知り、そこから友達同士で「昨日の番組見た?」とか話すようになって。グランジロックが流行り始めた頃だったので、Soundgardenとか、Pearl Jam、Nirvanaとかが出てきた頃ですね。

―ライブに行くようになったのは?

寺田:大学生の頃にジャパニーズパンクが流行り始めて、BRAHMAN、POTSHOT、BACK DROP BOMB、KEMURIとかですかね。その辺のライブは行っていました。

―じゃあモッシュしてたんですね。

寺田:してました(笑)。もう穴は塞がりましたけどボディピアスも結構開けてて、髪の毛も金髪で、上野の中田商店で迷彩のカモフラージュのゴアテックス買って。当時まだ裏原って呼んでないですけど、原宿行ってNOWHEREに並んだり、心がもうあっち系のファッションと音楽に完全に浸食されてました。

ー議員会館で撮ってるインタビューとは思えない内容です(笑)。

寺田:最初から政治家を目指したわけではないですからね。親が地方自治体の長(父は元秋田県知事の寺田典城)をやっていたので、政治自体は身近だったんですけれども、親の選挙を手伝って色々なことを言われるのが嫌で。こんな世界は絶対嫌だと思い、就職活動して民間企業に入りました。政治の世界はむしろ嫌悪していましたね。

―どんな嫌なことがあったんですか?

寺田:親が知事選挙に出る時だったと思いますが、息子もいい歳、大学生になっているので一緒に挨拶回りをさせようと、支援者やいろんなところを周るんですが、父親のことを褒める人もいましたけれども、貶す人もいて。すごく印象に残ったのは、宴席に父親の代理として行った時のこと。20代そこそこの人間が言われるがまま上座に座らされて、まだお酌をするとかも分からないからただ黙って座って色んな人を紹介されて。後で酔っ払ってきた方々に「お前の親父のために集まってやったのに、なんやお前、お酌もしないで偉そうに」みたいなことを言われて、カルチャーショックというか、外出て半べそかいてましたね。

ーその当時、見た目も若いままじゃないですか。

寺田:スーツの着方も分からないので、親戚が亡くなったのを契機に黒い服を買えと言われて、近くにあった知り合いのお店でY’sの黒の上下とか買って。サイズもダボダボで、髪の毛は色を黒くしていたと思いますけど、今の僕から見るとクソガキみたいな格好と雰囲気をしていたと思います。

ーそれに対してご家族、お父さんは何か話をされたんですか?

寺田:高校時代からあんまり品行方正でもなかったので、別にいちいち何か言われることはないです。感謝もされないけど怒られもしなくて、親の選挙を手伝うのが当然みたいな感じでしたね。

ーけれども奥さんも……(妻は参議院議員の寺田静)。

寺田:そうなんです、巻き込んじゃって。彼女の方が必要な人材だなと思って応援しています。自分が政治家を志したのは、尊敬する先輩から「それほど今の政治がおかしいと解っているのに、なぜ自分で解決しようとしないのか。おかしいと思った人が解決しなければ、世の中何も変わらない」と言われたことがきっかけです。

ルチアーノを聴きにイビザ島へ

―音楽の話に戻りますが、浪人、大学時代にロックバンドを聴いていて、ダンスミュージック、ヒップホップも好きだとHPに書いていました。ロックから移行したのはどういった経緯ですか?

寺田:大学に入ったぐらいからヒップホップが好きになって、Wu-Tang Clanとかあの手のところに行くんですけど、しばらく会社員やって、政治家になってからテクノに傾倒したのは、実は『FUJI ROCK FESTIVAL』がきっかけですね。当時は最奥のオレンジコートというステージで、金曜日の夜中から朝までオールナイトフジっていうテクノのイベントがあって、毎年朝まで踊ってたんですよね。大人になってある程度経済的に余裕があるので、ageHaでやっていた『CLASH』(リッチー・ホウティン等が登場したテクノイベント)に通うようになったのも同じ時期かもしれないです。

ーテクノミュージックにすんなり移行する人とそうじゃない人と分かれるじゃないですか。ブログを拝見すると奥さまもその手の音楽は嫌いじゃないみたいな。

寺田:そうだったんですよ、結婚するまで気づかなかった。それこそ一番忙しい官邸勤務の時も含め、与党になった時は忙しくなると逆にクラブに行きたくなっていたかもしれないです。妻と一緒にageHaに行こうとして、でも「今日週刊誌が狙いに来るらしい」みたいな情報があって、本当にめちゃめちゃ行きたいイベントを我慢したり。官邸総理側近が夜な夜なクラブで飲んだくれているという記事を作ろうとしたんでしょうけど、後日談で聞くと、それを撮りに来た二人組の記者たちは「よくこんなところに朝までいれるね」という感想を持って帰ったらしいです(笑)。

夫婦でAtari Teenage Riotのライブを観たあと

寺田:一番好きなDJはルチアーノなんですが、イビザまで聴きに行きました。母が大病にかかって僕の結婚式に来れなかったんですけど、骨髄移植もできなくて悲しみにくれていたら、新薬で何年かかけて劇的に治って。治った機会にどこへ行きたい? って聞いたら、死ぬ前にバチカンとバルセロナのサクラダファミリアが見たいっていうので、妻と息子と両親とでバルセロナまで行ったんですね。そのまま先に両親を帰して、妻とまだ3歳ぐらいの息子とイビザに3泊行って、Pacha(イビザの人気クラブ)で初めてルチアーノを聴きました。

―良かったですか?

寺田:良かったですね。日本だと、音楽に身を浸すのは若者のカルチャーという感じですけど、イビザに行くとおじいちゃんおばあちゃんも全然普通に野外でテクノ聴いて踊っていたりするんですよね。だから本当に豊かだなと思って。僕ももうそろそろ50歳になりますけど、恥ずかしいとか思わず、屋外でも聴きたいと思っています。

イビザにて

ー今でも遊びに行ったりしてます?

寺田:クラブはなかなかなくて、フェスが多いですね。今年は『フジロック』に行けなかったんですけど、去年はちょっとだけ行ったのと、あとは『SUMMER SONIC』とか、もうちょっと前は伊豆でやってる『Rainbow Disco Club』も好きで、泊りがけで行っていましたね。

意思決定層も人生を楽しんで生きるべき

ー愚問かもしれないですけど、寺田さんみたいな遊び方をしている議員さんは他にいるんですか?

寺田:「クラブ」というと、銀座のお姉ちゃんの方になっちゃってる人は掃いて捨てるほどいると思いますが、ダンスミュージックが好きな人はいないでしょうね。自分は問題意識を持って風営法の改正に取り組んできて、最初の組み立てまではやったんです。でも選挙に落ちて自分がいなくなり、本当に音楽が好きな人がいない状態になってしまった。それもあって、やっぱりまだ警察の「夜な夜な男女が暗闇で酒飲むと悪いことする」という固定観念を覆せなかった、中途半端な改正に終わってしまった。コロナの時もフェスを救いたい、クラブを救いたいということで持続化給付金などの話を持ってきたんですけど、自分が色々やっている時に「実は俺も!」みたいな感じで寄ってくる議員もほとんどいなくて、もしかしたら自分ぐらいしかいないのかなと。

https://twitter.com/teratamanabu/status/1243072970777452545

ーおっしゃるように、クラブに対する悪いイメージはあるし、クラブに限らず夜の街でよろしくないことが起こっている部分も多少は当然あるわけで。日本はその辺を完全に潔癖化しないと駄目なのかな、という気もしてて。

寺田:ヨーロッパって、やっぱり人生を楽しむことに対してものすごく正直だし、前向きで、そうあることに対してみんなも当然だよね、と思っている空気がある。逆に日本は楽しむことは何か申し訳ない、仕事を休むのも「お休みをいただく」みたいな感じになっちゃっているので、慎ましやかにやらなきゃいけないし、何か問題が起きたらそれがクローズアップされるというのがあって。

ただ、ヨーロッパで言えば人生を楽しむ大きな部分に音楽があったり、それによって何かしらトラブルが起きるのであればちゃんと対処するわけで、夜にクラブで遊ぶこと自体を罰とはしない。例えばイビザでは笑気ガスが社会問題になりましたけど、音楽を取り上げるかというと、音楽を維持した上でドラッグの問題を取り締まるというのはあるべきだと思うんですよね。

日本はドラッグ問題が起きたら、起きたその場自体を否定するみたいな(風潮が)あってつまらないですよね。それって意思決定する立場の人間が、人生を楽しんで生きていないからだと思うんです。自分が人生を楽しまないと、誰かが人生を楽しんでいる場を消し去った時に何の心の痛みも感じないし、より窮屈な世の中になっていく連鎖になると思うので。意思決定層は遊んでいればいいってことではないですけど、人生が楽しい、人生を楽しむというのは当たり前のことだし、それをみんなが謳歌するべきだという立場に立った人がやるべきでしょうね。

アーティストが左派サイドに多い理由

―「音楽に政治を持ち込むな」という声についてはどう思いますか?

寺田:音楽をやっている人たちが政治にタッチしちゃいけないなんて思っていないし、今のご時世――分断が進む時代だからこそもっともっと政治的なメッセージはアーティストから出てもいいのではないかと。それこそ『フジロック』の配信をずっと見ていて、やっぱり音楽にパワーを感じました。僕ら政治家が愛と平和だっていうよりも、サンボマスターが言ってくれた方が届くんですよ。政治にどんどん飛び込んでほしいというわけではないけど、もっともっと社会、政治に対するメッセージを、どっちサイドでもいいですけど、持ってくれた方がいいなと思いました。

―どっちサイドというのは、いわゆる右派、左派的なことですか?

寺田:アーティストは左派サイドに多いと思いますけど、それ以前に政治を敬遠する感じが日本にはあるので、興味を持ってもいいと思いますけどね。

ー知人のミュージシャンと話していて、なぜミュージシャンは左側の人が多いのか、という話になったんですよ。寺田さんも立憲民主ですから、どちらかと言えばそちらの方だと思うんですけど。

寺田:どうなんでしょう、所属政党の立ち位置と自分自身の本当の意味での主張がぴったり一致するわけじゃないですし、僕自身は真ん中だろうなとは思っています。

アーティストにリベラルが多いというのは、多様性に対する寛容さですよね。やっぱりアーティストである以上、自分自身の個性を周りが尊重するし、あなたの個性も尊重するというところにアーティストはあると思うので。

ーいわゆるリベラルと言われてる人たち、勢力がなかなか浸透しにくい世の中になっているなと。それは先日の参院選の結果からも明らかだと思います。この辺の原因というか、何でこうなってきたんだと思っています?

寺田:どのサイドや視点から考えるかによるでしょうけど、リベラルと自称する政党も含め、ちょっとお高くとまってきたんだと思いますね。多様性は素晴らしいんですけど、「多様性は素晴らしいんだ、君たちは分からないのか」という問いかけの仕方に、拒否感を感じて距離を置く人が増えてきてるんだと思うし、その一方では強い者と弱い者の差が広がってきている中で、誰かのせいにしたいという風潮につけ込む勢力が出てきたんだと思います。どういう時代であれ、リベラルというか多様性を大事にすることと、人それぞれを尊重することは大事な概念なので、その概念をうまく国民なり社会の中で共有できるように、したたかにやらなきゃいけないんでしょうけど、やはりちょっと大上段に、ものを分かったように言っている雰囲気が出ている気がしますね。そこに対して大きな隙が生まれて「リベラルなんて格好悪い、リベラルが言ってることはなんか偉そうだ」と、廃退の一途を辿っているような気がします。

ー僕ら国民の生活が苦しくなってる点も大きいと思うんですけど。

寺田:はい。どこの国も今、右傾化が進んでいて、それは誰かのせいにしながら自国民を守るのだ、というようなロジックがかなり広がっている話だと思うんです。そこはめげずに再分配も含めてちゃんとやって、どのような立場の人だって生きやすい世の中を目指していけば、分断を煽るような風潮が伸びていくことはなくなると思うんですね。政治がある意味敗北しているというか、機能していないからこそ、こういう政治が生まれてくる気がします。

大麻についてもタブー視せずに議論を

ーさっき一瞬話題にも出たドラッグの問題って、学校とかに貼っているポスターだと「ダメ、ゼッタイ」じゃないですか。一方で、その気になれば入手できちゃうっていう状況とか、国によっては合法なものもあったりして、いい悪いはさておき、何て言うんですかね……

寺田:フェンタニルは本当に大変な問題だと思ってますし、覚醒剤もそうですけど、大麻に関してはもうちょっとタブー視せずに、議論してもいいと思いますね。たとえばカナダは許可されていて、行くと確実に違う匂いとして漂うわけですよね。いわゆるドラッグを取り扱う反社会の人達の資金源を断つためだとか様々なロジックがありますけど、健康面で考えても大麻に関しては諸説出てくるし、日本も医療用大麻の使用に向けた法整備も進んできていますし。

厚労省の経済局と色々話したりはしていたんですけど、今まで連綿と続いてきた在り方自体の踏襲はやっぱり避けられなくて。僕もお酒を辞めて4年になりますど、お酒の方がよっぽど体には悪いし、常習性もあるし、タバコも本当に体に悪いので、他と比べてどうなのかということはちゃんと理解されるように、タブー視せずに議論してもいいのかなと(※)。

※原田隆之(筑波大学教授)執筆の記事「大麻合法化論を考える 本当に害は小さいのか、医療目的の使用の是非は?

ー寺田さんみたいな考え方だと潰されちゃうのかなって思っちゃいますが……

寺田:力がないから潰されないですよ(笑)。それに何かしら問題があって潰されるとすれば、潰す側=既得権益を侵された勢力がいるということですけど、それであれば対抗する組織もできると思うんです。僕も力ないですし、だからもっと色々議論したらいいと思うんですよね。インバウンドが増えてる中で、日本の伝統的な捉え方がミスマッチを生んでいるタトゥー / 入墨も含めて、いろんな議論があっていいと思います。

ー今おっしゃった既得権益というのが、自民党のイメージなんですけど……

寺田:って言うほどでもないですよ。もちろん様々な団体の意見を聞くという役割を自民党は果たしていますけど、僕も二十何年見てますけど、昔ほどお金と票で繋がって物事が決められていく状況ではないですね。

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