INDEX
みんな自分の独立したレーベルをやったほうが絶対にいい
―『DANCE TO YOU』の次のアルバム『Popcorn Ballads』(2017年)は、告知解禁とともにストリーミングですぐ聴けるというリリース方法でした。海外の事例はあったけど、著名な日本人アーティストでやってる人はほぼいなかったですよね。そういうチャレンジングな動きができるのも、ご自身でレーベル経営をしている強みですね。
曽我部:当時「なんでみんなやらないんだろう?」っていう話をしたのは覚えてます。カニエ・ウェストがストリーミングだけでアルバム(『The Life Of Pablo』 / 2016年)をつくって、さらに途中で内容が変わるってすごく面白いと思ったから、TuneCore Japanさんに「そんなことできるの?」って相談したんです。そうしたら、リリース後に楽曲をアップデートするのも「できる」と言ってもらえて。世間に対して、「これからは配信オンリーで作品が出る可能性があるんですよ」っていうのをアピールしたい気持ちもありました。

―実際時代はどんどんそっちに進んで行って、今ではソロもサニーデイも過去作はすべてTuneCore Japanから配信されているわけですが、デジタルのディストリビューションもいろいろある中で、TuneCore Japanを使っているのは何か理由がありますか?
曽我部:TuneCore Japanさんは初期の頃に話をしに来てくれて、すごくいいなと思ってそれからずっとお付き合いさせてもらっているので、TuneCore Japanさん以外を知らないんです。でも本当にいろんなわがままをいつも聞いてくださって、もうずっと縁があるって感じ。

―TuneCore Japanのスタートが2012年で、日本ではデジタルディストリビューションの先駆けでしたもんね。それこそ最初に話したように、今は誰でも音源のリリースができる時代になって、裏を返せばレーベルに所属する必要もなくなったわけですが、レーベルの役割はどう変化したと感じていますか?
曽我部:僕らは他のアーティストを出してレーベルを大きくしていこうとはあんまり思ってないし、自分の作品含めて宣伝もそこまで大きくやるわけじゃないので、ROSEから出したいと言ってくれるアーティストには、「絶対自分でやった方がいいですよ」ってまずは伝えます。もちろん多少手伝えることはあるけど、ROSEから出すことに大きなメリットがあるわけではないと思うし。
むしろ僕は、みんながそれぞれに自分の独立したレーベルでやったらいいんじゃないかなって思ってて。結局誰かの作品を出すっていうことは、その人とROSEで契約書を交わさなきゃいけなくて、そこにはいろんな縛りが必ず出てくるんですよ。今も自分が過去にした契約をどうしようかっていう案件がちょっとあったりするし、でも他方では誰かと契約書を結んだりとかしてて……面倒くさいなっていうのはあるよね(笑)。

曽我部:本当はその人が契約書も何もなく、自分で自分のことを面倒見て、自分で自分の売り上げを自分のものにしてっていうのが一番美しいと思うから、みんなそうしたらいいのになって、どっかで思ってる。でも、「ROSEが好きなので、ROSEから出したいです」って言ってくれる人がいるから、「じゃあ出そうか」っていう。
―そこも縁ですね。
曽我部:そうそう。ROSEでリリースしてみて、自分でもできることがわかったりする人もいるしね。ランタンパレードは最初からずっとROSEの看板アーティストで、僕も大好きなんですけど、今は自分で配信リリースしてて、僕はそれがすごくいいと思う。
―途中で「印税の分配が大変」という話もありましたけど、TuneCore Japanには収益を自動分配してくれる「Split」という機能があったり、便利なツールが増えてきて、時代的に見ても自分でやれることが増えてますもんね。
曽我部:企業に寄り添ったシステムじゃなくて、個人に寄り添った仕組みが増えてるから、個人にはとってどんどん良くなっていくっていう、それが今のネット社会なんじゃないかな。ROSEをつくった当時はホームページをつくる人に数十万も払ってフォーマットをつくってもらってたけど、今はスマホがあれば何でもできるわけで、それってすごくいいですよね。