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お金は後でついてくる。お金のことより先に、「こいつ面白いな」っていう活動ができてるかどうかを考える
―ちなみに、スタッフさんの人数もレーベル立ち上げ当初から少しずつ変わっていったんですか?
曽我部:基本的に2年目くらいからは今もずっとやってくれてる水上さんと朗太くんがいて、大体いつも3人プラスもう一人助っ人ぐらい。
―もっと人を増やそう、みたいな話にはならなかったんですか?
曽我部:今ちょうどなってます(笑)。水上さんはもともと通販のアルバイトだったんですよ。でも今は経理をやりながらマネージャーもやって、ブッキングもやって、請求書を書いて、ツアーも回って、物販もやってみたいな、ほとんどのことをやってくれてて。で、朗太くんは東京にいて、リリースのスケジュールを切ったり、営業や宣伝をしたり、デジタル流通のTuneCore Japanさん(※)とのやりとりとかも全部やってくれてて。さらにね、印税の分配をしなきゃいけないから、その計算も2人だけでやってくれてて、さすがにちょっと無理だよね、みたいな話は最近あって。もう1人誰か現場なりでバリバリやってくれる人がいたらいいなっていう話はしてます。社員募集は何回かしたことあるんですけど、なかなか難しくて。「曽我部さんの音楽が好きです」みたいな若い子が入ってきても、ちょっと想像と違ったみたいなこともあったりして、だからそこは縁かなと思うんですけど。
※誰でも楽曲を世界中(185ヶ国以上)で55以上の配信ストアプラットフォームへ配信できる、米音楽配信ディストリビューションサービスTuneCoreの日本版。2012年10月より日本でのサービスを開始。

―レーベル存続の危機みたいなのはあったりしたんですか?
曽我部:お金的には何回かあったかな。2回ぐらい? 僕が「スタッフにボーナス出しといて」とか言ったら、「今、銀行のお金0円です」って言われて焦るとか(笑)。
―サニーデイ・サービスにとって大きな転換点になった『DANCE TO YOU』(2016年)は、出来上がったアルバムをギリギリでナシにして、もう一度曽我部さんが一人でつくり直した作品でしたね。さすがに大変だったんだろうなと思いました(笑)。
曽我部:あのときはお金なくなったね。でも切り詰めたらこれくらいでもアルバムがつくれるんだなっていうのも学びました。『DANCE TO YOU』のときって、最初は普通のレコーディングスタジオを使ってたんですよ。普通のスタジオはロックアウトで15万とかで、プラスエンジニア代もかかるから、1日入るだけで20万弱ぐらいかかっちゃうんです。それをずっとやった挙句ナシにしたから、もう全然お金なくって。
結局Macを持って練習スタジオに行って、自分でマイクを立てて録って、ミックスダウンも全部自分でやったんですけど、でもいいものができたと思う。お金的に大変だったから、やむを得ずやった部分はあったんだけど、それが結果として成功したものにはなったかな。

―そうまでして作り上げねばならない作品だったという凄みを感じました。サニーデイが再始動して最初のアルバムのころはまだそこまで活発に動いていなかったけど、『DANCE TO YOU』は「今のバンド」としてのサニーデイをもう一度打ち出すことに成功したアルバムになりましたよね。
曽我部:「作品だけちょっと作った再結成バンド」みたいに思われるのがすごく嫌だったから、本気でサニーデイをやっていくんだったら、ここは背水の陣で、「サニーデイ・サービスまだいます、現役です」っていうものを出さなきゃっていうのは自分の気持ちとして強くありました。
一方でお金のことはそんなに関係ないというか、例えば、「プロデュースしてください」って言われたときは、「お金なくてもできますよ」っていつも言ってて。面白い仕事をしたいだけなので、別にギャラがなくてもいいんです。アーティストは面白いことをやってたらみんながお金をペイしてくれる仕事だから、お金をどうやって確保するかを考える前に、「こいつ面白いな」っていう活動ができてるかどうかだけ。お金は後でついてくるっていうのはいつも思ってます。