INDEX
体験型の作品も盛り沢山。指紋を池で泳がせよう
ここで、展示室の外にあるふたつのアート作品に目を向けてみよう。実は本展中で何より心が動いたのは、この『指紋の池』という一作である。

手を置いて指紋をスキャンすると、自分の指紋が小魚のように誕生し、池を模した画面を自由に泳いでいく。それだけでもけっこう可愛く思えるものだが、自分の指紋は群れに紛れてすぐに姿を見失ってしまう。正直言ってよほどまじまじと見つめないと、個々の指紋の違いなんてわからないし覚えられない。ところが、本作の凄いところはここからである。
しばらくしてからもう一度池を訪れて手のひらを置くと……なんと、無数の指紋の群の中から1匹(?)だけが、こちらに向かって一心不乱に泳いでくるではないか。「会いたかった」とばかりにもどかしげに一回転し、目の前で止まる指紋。可愛すぎる。佐藤自身が記者発表会で「やってみて下さい、こんな可愛いものないですよ」と発言していた、その通りであった。私のシモーン(命名した)にとって私は唯一無二の主であり、命ある限りその繋がりを断ち切ることはできない。個体差が識別できないなんてとんでもない間違いだった。思えば携帯やPCの番人も務めてくれているこの存在の、なんて愛おしいことか。
あまりにも可愛かったため最後にもう一度立ち寄ってみたところ、タイムアウトしてしまったようでもはや池にシモーンの姿は無かった。ロスが激しかったので、もう一度スキャンをして、シモーン2号を池に放ってから会場を後にした。よほど時間を空けない限りないと思うが、ほどほどの時間をおいて会いに行くのが正解のようだ。

もうひとつの体験型作品は『計算の庭』。参加者は任意の数字の札を首から下げて、エリアに入る。その数字を起点として、庭の中に設けられた「×3」「+5」などのゲートをくぐって、どうにかゴールの数「73」になるように計算を重ねてゆく趣向だ。退出後には所要時間と計算履歴をプリントアウトして持ち帰ることが可能。ちなみにスタート時の数字によって難易度が変わるらしい。親子や友達同士でチャレンジしたら盛り上がりそうである。