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佐藤雅彦、初の大規模個展レポ ピタゴラスイッチやだんご3兄弟を生んだメソッド

2025.7.11

#ART

およそ3年の大規模改修工事を経て、2024年3月に生まれ変わった横浜美術館。そのリニューアルを記念する企画展が『佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)』である。

展覧会のメインビジュアルは佐藤の手がけたコンテンツの名前で飾られている。テレビ番組の『ピタゴラスイッチ』や『だんご3兄弟』。お菓子のドンタコスやスコーン。ビデオゲームの『I.Q』。これらが全てひとりの表現者から生み出されたことに、あらためて驚かされる。佐藤らしい一風変わった大規模個展の模様を、さっそく観ていこう。

「人にどうやったら伝わるか、どうやったら分かってもらえるかを考えることが好きでたまらない」

メインビジュアルのデザインは「盆栽」のイメージだったという。会場では、決定版よりさらに作品名が茂った「剪定前」の状態も見ることができる。

広告代理店でのCM制作などの時代を経て、慶應義塾大学の教授として「佐藤雅彦研究室」を牽引し、現在は東京藝術大学大学院映像研究科の名誉教授をつとめる佐藤。40年以上に渡る創造活動の中で、TV番組やCM、キャラクターから、映像作品やメディアアートまで、恐ろしく多様なコンテンツを生み出してきた。単純化された紹介を嫌ってメディアへの露出を避けてきたという彼だが、このたび横浜美術館のラブコールに応える形で、ついに初の大規模個展を開催することとなったのだという。

中央が佐藤雅彦。本展のディレクションも自ら務めたそうで、徹夜でヘロヘロという状態で記者発表会に登場。PCの不具合に狼狽える親しみやすい一面も

本展ではその輝かしい活動 / 経歴の軌跡をたどる……のかと思いきや、訪れてみるとだいぶ雰囲気が違う。なんと佐藤雅彦の創造のメソッドが「このCMはこうやって考えて出来上がったんですよ」「僕はいつもこういうのを大事にして作ります」と、事細かに開陳されるのである。しかも人の心を動かすプロとしての全力を傾けて、その「作り方」を分からせようとしてくる。

「人にどうやったら伝わるか、どうやったら分かってもらえるかを考えることが好きでたまらない」と語る佐藤。それならば鑑賞者側は、この嬉々とした虎の子の公開に立ち向かい、クリエイティブな思考の全てを盗み帰ってやろうではないか。

展示の冒頭には、29歳の佐藤が記した「別のルールで物を作ろうと考えている。」というメモが展示されている(画像奥)。現在でも、このメモは佐藤のデスクの前に貼られているのだそう。まさに佐藤雅彦の根幹を示すひと言である。

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