昨年大きな反響を呼んだ、FRISKが新たなチャレンジを始める社会人や学生たちを応援するプロジェクト「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」の一環として、今年もJ-WAVEの番組『GRAND MARQUEE』とのコラボレーションコーナー「FRISK DEAR ME」が実現。
2日目に登場したのは、シンガーソングライターの柴田聡子。エッセイや詩、絵本の物語など、数々の文章も寄稿されている柴田に、将来に対する不安を抱えていたという26歳の自分に向けた手紙をもとにしながら、飼っていた犬と叶姉妹から得た学びや、過去と今、未来の自分それぞれの関係性などについて話を聞いた。
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「自分が進む道への覚悟を求められたりすると思うんですけど、私にはそういうのがまるでなくて」
Celeina(MC):柴田さんは2024年10月にも番組にご出演いただいていますけども、お元気でしたか。
柴田:おかげさまで元気でした。
タカノ(MC):良かったです。さて、今回は柴田さんに、あの頃の自分へ向けた手紙を書いていただきました。ズバリ手紙の宛先は?
柴田:26歳、ファーストアルバムを出した頃の私です。
タカノ:26歳ということで……。まず、手紙を書いてみていかがでしたか? 過去を掘り下げるってしんどい作業だと思うんですけど。
柴田:どうしても偉そうになってしまって、難しかったですね。過去を掘り下げることはみんなにとってしんどいことだと思いますし、私も例に漏れずでした。
タカノ:我々もお手紙を読ませていただきましたけれど、小説を読んだ後のような読後感があって。こちらのお手紙はファーストアルバムをリリースされた頃の柴田さんご自身に宛てたということですが、当時の柴田さんはどのような生活を送っていたんです?
26歳、ファーストアルバムを出した頃の柴田聡子へ
こんにちは。38歳になったあなた、柴田聡子です。
自分で歌うための曲を作って歌い始めたことを意外に思うでもなく、
面白いと認識するでもなく、向いているとも感じなく、
ただなんとなく曲を作るのや歌うのをやりたくて、
なんとなくやめなかった状態だったんじゃないかと予想します。
手紙の序文。柴田聡子直筆の手紙全文は4月10日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)
柴田:ファーストアルバムが出た頃は、四万十川のほとりにあるデザイン事務所で仕事をしていたんですよ。だから、このアルバムは仕事に行く前に自分の弾き語りを収録をして、「あとはお願いします」とプロデューサーさんにおまかせしていて。レコーディング以降はオンラインでのやり取りがほとんどだったから、デビューを重く受け止めてもおらず、「出たな」くらいに思っていました。
Celeina:かなりライトな感じ。
タカノ:手紙には「何となく辞めなかった状態」と書かれていますが、そのころは「これからやるぞ」でも、「もうやめようかな」でもなく?
柴田:自分が進む道への覚悟や「私はこれでやっていくんだ」って思いを求められたりすると思うんですけど、私にはそういうのがまるでなくて。流れに任せていたというか、特段覚悟をすることもなくやっていましたね。辞める理由もないし、やっていて楽しかったし。
Celeina:全員が全員バシッと道を決めて進んでいるわけではないから、柴田さんみたいな方もいらっしゃると思いますよ。
柴田:それなら良かった。今はそのフワッとした感じもかけがえのないものだったなと感じています。

シンガー・ソングライター/詩人。2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに活動を始める。2012年、1stアルバム『しばたさとこ島』でアルバムデビュー。2022年、6枚目のオリジナルアルバム『ぼちぼち銀河』をリリース。2016年には第一詩集『さばーく』を上梓。詩やエッセイ、絵本の物語などの寄稿も多数。2023年、足掛け7年にわたる文芸誌『文學界』での連載をまとめたエッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。詩人としても注目を集めている。2024年2月28日、7thアルバム『Your Favorite Things』をリリースした。
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愛犬&敬愛する叶姉妹から学んだ姿勢。「毎日を悔いなく生きれば将来への過剰な不安も無くなる」
タカノ:手紙には「不安もあった」と書かれていますけど、どういった部分に不安を感じていたんですか。
今の私でも、あなたの考えていたことは実はほとんどわかりません。
というか、何も考えていなかったのかもしれません。仕事も恋愛も将来も、
その場その場で対処する日々だったと思います。そりゃ不安ですよね。
余談ですがこの不安は、毎日ひたすら力一杯生きることで結構解消されます。
後々、飼っていた犬や、叶姉妹のおふたりの姿勢などからそれを学びます。
それが難しいけれど……。
柴田聡子の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
柴田:生活は不安定でしたし、生きていく上でのちゃらんぽらんさというか、計画性の無さや生活に対するイメージの欠如も不安でしたね。「これからどうなっていくんだろう」と思いながら過ごしていました。
Celeina:手紙には「飼っていた犬や、叶姉妹のおふたりの姿勢などからそれを学びます」とありますが、こちらは?
柴田:私は2頭犬を飼っていたんですけど、幸運なことにその子たちが最後の時間を生きる場面に立ち会えたんですよ。犬だから言葉は交わせないけれど、年老いたり病気で亡くなっていく時も、その子たちは毎日しっかり生きていて。ちゃんと起きて、食べて、寝ている中で、段々と食べれなくなって、死に向かっていく。自然に生を閉じていく様子の力強さに「こうやって生きれば良いんだ」と学ばせてもらったんです。
Celeina:叶姉妹のお2人からはどのような学びを得たんですか。
柴田:叶恭子さんは「死は怖くない」という旨をお話されていて。というのも、「毎日を特別」だと思ってやりたいことを力一杯やって生きているから悔いがないらしいんです。毎日悔いなく生きることって難しいけれど、恭子さんがおっしゃっていることは本当にその通りだと思ったんですよね。何十年後のことは全く分からないし、一日一日悔いなく生きれば将来への過剰な不安も無くなるかなと。
Celeina:本当に大事なことだと思います。コロナ禍を経て、未来は分からないとつくづく実感しましたし、過去も変えられない。だからこそ、今にフォーカスを当てて前に進んでいくというメッセージですよね。柴田さんは今もそれをモットーにされている?
柴田:そうですね。この前、叶姉妹のお2人と対談させていただいたんですが「大切な日の前に特別なフェイスパックを使います」みたいな話をしたら、「毎日が特別なのだから、すぐに使いましょう」ということをおっしゃっていて。そこから、スペシャルだと感じることでも気にせず日常的にやるようにしています。
Celeina:最近されたスペシャルなことは、何だったんですか。
柴田:少し方向性は違うかもしれないんですけど、以前東京国立博物館の東洋館でライブをさせていただく機会があったんですよ。その時は「こんな機会は一生ないだろうな」とも感じていたものの、いつだって特別なわけじゃないですか。だから、「今日は一生に一度の日だ」みたいな気持ちを消して演奏しましたね。

タカノ:毎日が特別であるからこそ、逆に気負わないというか。
柴田:そうです。大切な日はついつい気負ってしまいがちですけど、毎日が特別だと心構えていられたらと思っております。
タカノ:そういった心構えは、26歳の時には無かったんですか。
柴田:世の中への良く分からない文句みたいなものを抱えながらやっていましたし、そういう斜めから物事を見ている自分をあえて維持しようと思っていた節もありましたね。言うなれば「毎日が特別である」のような真っ直ぐなことからは距離を置こうとしていたんじゃないかな。
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未来の自分はたった1人の付かず離れずにいる人物
タカノ:でも、このお手紙ではそんな過去の柴田さんを現在の柴田さんが受け止めている気がしていて。「いつの時点でも現在の私がなんとかするので、出来るだけ気楽にやっておいてください」というメッセージはグッときました。
いろいろなことが起こるだろうけれど、
自分の人生が続く限り、なんでもいいから、とにかく一日一日生きていてくれれば、
いつの時点でも現在の私がなんとかするので、出来るだけ気楽にやっておいてください。
柴田聡子の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
柴田:私自身、自分のことをそこまで好きではない人生を送ってきましたけど、自分に対して「ダメだったね」と思うのって苦しいし、申し訳ないじゃないですか。過去の自分にとって未来の自分はたった1人の付かず離れずにいる人物だし、家族や恋人よりももっと近くにいる存在で。だから、その人が頼もしいと良いなと思って、この文を書きましたね。
タカノ:過去の自分が今の自分の隣にいる感覚というか、自己でありながらも、一番近い他者として接されている点がこの手紙の魅力だなと。
柴田:アリアナ・グランデやマイリー・サイラスをはじめ、近しいことをみんな歌っている気がしていて。自分のために花を買ってあげることができるとか、誰もが自分で自分を励ましていると思うと面白いんです。自分の中には過去と今と、未来の自分の3人がいる。どんなに孤独な時でも、3人チームで頑張っていると思うと案外「行くぞ」って思えるんですよ。
Celeina:そういうビジョンは持ったことがなかったから、柴田さんのメソッドを取り入れてみたいです。そして、柴田さんに、あの頃のご自身に贈りたい楽曲を選んでいただきました。どんな曲でしょうか?
柴田:「昔のあなたが音楽を続けてくれたから、今も曲を作っています」っていう報告を兼ねて一番新しいシングルの“Passing”を選びました。
タカノ:歌詞にも<泣くのこらえながら 思ったよりもはやく大人になる>とありますが、過去の自分に語りかけるような1曲だと感じています。
柴田:この曲はドラマ『風のふく島』のエンディングテーマなんですけど、ドラマの内容も自分で人生を切り拓こうとしている人たちの愛らしい物語で、そこにに対するポジティブ・ネガティブどちらかだけではないエールということをテーマに作ったんですよ。そういう部分と“Passing”はオーバーラップするように思います。
タカノ:それでは最後に、26歳の柴田さんと同じように人生の岐路に立つリスナーの皆さんへメッセージをお願いします。
柴田:色々あると思いますが、健康に気をつけて一緒にやっていきましょう。
タカノ:皆さんも過去の自分、今の自分、未来の自分、チームでね、進んでいきましょう。
柴田:本当にそうです。スクラムを組んでやっていきましょう。
「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」supported by FRISK

新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月10日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)。
『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』

第一線で活躍する11組の「あの頃のジブンに届けたいコトバ」。悩みを抱えていたかつての自分に書いた直筆の手紙を展示。この春、新生活を迎えるすべての人へ贈ります。
会場:下北沢・BONUS TRACK GALLERY(東京都世田谷区代田2-36-12)
会期:2024年4月10日(木)〜15日(水)11:00〜20:00(全日程共通)※営業時間は変更になる場合がございます。
手紙展示:アオイヤマダ、あっこゴリラ、宇垣美里、空気階段、崎山蒼志、柴田聡子、玉置周啓(MONO NO AWARE)、長濱ねる、藤森慎吾、ゆっきゅん、若槻千夏
主催:NiEW 後援:FRISK
■アオイヤマダさん登壇のスペシャルトークショーも実施!
展示に加え、本プロジェクトにメッセージを寄せていただいたアオイヤマダさんに登壇いただき、ご自身が何者でもないフレッシャーだった頃を振り返りながら、新生活における悩みや迷いとの向き合い方、気持ちを前向きにする方法などについてコトバを贈るトークショーを開催します。
場所:BONUS TRACK LOUNGE(東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 中央棟テナント2F)
日時:
「アオイヤマダさんトークショー」4 月 12日(土)14:00~15:00(13:30開場)
会場の席数に限りがございますので、参加をご希望の方は下記リンクよりお申し込みをお願いいたします。抽選の上、当選者のみご連絡を差し上げます(メールにてご連絡を差し上げますので、「@niew.jp」をドメイン指定受信に設定いただくようお願いします)。
→詳細はNiEWの特設ページをご確認ください