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山口馬木也を筆頭とした俳優陣の素晴らしさ
『侍タイムスリッパー』で語らなければならないのは俳優たちの魅力だろう。「俳優全員が全員とも役にハマっていて、本作をきっかけにこの後の活躍も見たくなる」のも『カメラを止めるな!』と共通している。
何より、主人公である高坂新左衛門を演じた山口馬木也は誰もが好きになれる、絶賛するのではないか。佇まいからして生真面目で朴訥とした侍にピッタリであるし、特に「ショートケーキのおいしさを知った時」と、続けての「テレビで時代劇を初めて見た時」のリアクションはあまりに素晴らしい。
そのギャップに笑えるだけでなく、侍の時代から現代の日本に向けての言葉はあまりに尊く、いかに時代劇が人の心を動かすのかとわかるその姿を見て、もらい泣きする人もいるのではないか。映画を観終われば、山口馬木也本人が「この作品、この役との出会いに感謝。役者を続けてきて良かった」と語る意味もきっとわかるだろう。
その他にも、作品のクオリティを上げるためのアイデアを意欲的に提案した大物俳優の貫禄がたっぷりな冨家ノリマサ、実際の撮影でも助監督や制作や小道具などで活躍した助監督役の沙倉ゆうの、実際に斬られ役として活躍する傍ら「殺陣(たて)技術集団・東映剣会」の役員・会長を歴任する峰蘭太郎など、それぞれが強く記憶に残る役を演じており、やはり俳優本人が持つ資質や実際の奮闘が、劇中の役にもシンクロしていた。
なお、峰蘭太郎は、斬られ役の第一人者であり2014年の映画『太秦ライムライト』でも主演を務めた、2021年に逝去した福本清三に代わって、殺陣師役として白羽の矢が立てられたのだとか。出演を快諾後、その福本清三の墓前にて「先生の代役をつとめさせて頂きます」と報告した峰蘭太郎の存在感、殺陣の迫力にも注目してほしい。