12月13日(金)より、清水茜によるマンガを原作とした映画『はたらく細胞』が公開中だ。2024年は1月に劇場公開された『ゴールデンカムイ』やNetflix配信の『シティーハンター』など、熱心な原作ファンからも高い評価を得た実写映画が相次いだが、本作も「実写化成功」の潮流に乗った作品となっていた。その理由を記していこう。
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コスプレ感が問題にならない理由と「ここまでやりきった」からこそのスケール感
本作では実写映画化作品で批判されがちな「コスプレ感」がまったく問題にならない。何しろ『はたらく細胞』は、原作からして細胞たちを「擬人化」し、彼らのいる世界をユニークかつキャッチーに表現している。現実を誇張し、まったく別のものへと作り替えることで、「極端な見た目の実写化もアリ」と納得できる土台が築かれているのだ。
むしろ、「実写映画でここまでやりきった」ビジュアルこそが最大の魅力である。細胞役のエキストラは毎日約600人を動員、総勢では約7500名にのぼる。また、日本最高の技術力を誇る「白組」のCGを用いて作られた「ワンダーランド」と銘打たれる世界のスケール感は、劇場のスクリーンで映えるものだった。

さらに、「大便が押し寄せる肛門での激しい大人数のつば迫り合い」など、いい意味でバカバカしいシーンまでも大胆に作り上げている。「客観的には滑稽にも見える状況でも劇中のキャラクターは大マジメ」だからこそ笑えるし、その「本気」が時には感動にもつながるのは、同じく武内英樹監督の漫画の実写映画化作品『テルマエ・ロマエ』や『翔んで埼玉』と共通する面白さだ。
映画では『はたらく細胞』シリーズ初となる「人間の世界」も描かれ、「現実の人間での行いが体内ではこういう変化を引き起こす」というメカニズムもわかりやすく示されている。芦田愛菜演じるしっかり者の女子高生と、阿部サダヲ演じるちょっとダメな父親が織りなすドラマも感情移入がしやすい。基本的には「1〜2話完結」だった原作を映画として起承転結のある物語にする再構成や、スピンオフの『はたらく細胞BLACK』も含めたエピソードの選び方もなるほど的確で、原作ファンも納得できるだろう。
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『るろうに剣心』の「先」を目指した佐藤健のアクション
さらに、実写映画化成功の立役者として、W主演を務めた佐藤健と永野芽郁を推したい。2人は共に漫画の実写映画化作品で主演の経験があり、そのキャリアを活かしたハマり役になっているのだ。
何しろ、この映画『はたらく細胞』の予告編で視聴者の度肝を抜いたのは、佐藤健のアクロバティックなアクションだ。佐藤健自らが『るろうに剣心』でタッグを組んだアクション監督の大内貴仁を呼ぶことを提案し、しかも「『るろうに剣心』以上のアクションを見せないと、自分がやる意味がない」という気持ちで挑んだからこその、ワイヤーを駆使しての壁走り、特大ジャンプ、高速回転など、それぞれのアクションにはほれぼれとさせられる。

さらに、その佐藤健が演じる「白血球(好中球)」の武器は「ナイフ」であり、それは長い日本刀で派手な闘いを見せた『るろうに剣心』とは大きく異なる。佐藤健にとっても「初めての武器」だったそうだが、「ナイフを最大限に活かして速くて細かいアクションの動きをやりたい」とも要望し、その甲斐あってのナイフでの「近接格闘」に近いアクションもスタイリッシュに仕上がっていた。
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ヒーローとしての佐藤健の気合い、そしてFukaseとの対比
そもそも佐藤健は『仮面ライダー電王』という特撮ヒーローで主演を務めたこともあり、「史上最小で最も身近なヒーロー」を描く本作においては「僕は過去に、変身してヒーローをやっていた時期もあり、人一倍そういうジャンルにはうるさい自負がありますので、気合を入れて演じさせていただきました」とも語っている。
劇中で悪役となる存在との立ち回りは特に特撮ヒーローっぽさを感じるし、さらには「爆破シーン」もあったりもする。『仮面ライダー電王』でのヒーローとしての佐藤健が好きだった人にとっても、本作は必見だろう。
また、劇中で佐藤健が演じる「白血球(好中球)」は、「無表情でとっつきにくいけど実は良い人」なキャラクターで、容赦無く細菌を攻撃する怖さと、永野芽郁演じる「赤血球」を見守る優しさの両面を感じさせることも魅力的だ。それは劇中で「最強の敵」となるFukaseとの対比にもなっている。映画『キャラクター』では殺人鬼役にも見事にハマっていたFukaseが、どのような恐ろしさを見せるのかにも注目してほしい。
