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坂本が愛用していたピアノを展示

展覧会の最後を飾るのは、『Music Plays Images X Images Play Music』のアーカイブ特別展示である。元となっているのは、世界的メディアアートの祭典『アルスエレクトロニカ』(1997年)で披露され、インタラクティブアート部門でグランプリを受賞した坂本龍一(音楽)×岩井俊雄(映像)によるコラボレーションパフォーマンスだ。本展では、当時の坂本の演奏を記録したMIDIデータと、さらに演奏中の姿を撮影した映像を組み合わせることで、まるで坂本龍一が目の前で演奏をしているかのようなエモーショナルな再現空間を作り出している。展示されているピアノも、実際に坂本の愛用していたMIDIピアノだそうだ。

坂本の演奏したデータが瞬時に映像に変換され、スクリーンに光の筋となって反映される。単音から和音へとメロディが盛り上がっていくにつれて、無数の光の筋が長く伸び上がって、そのままこちらに向かって降り注いできそうだ。そこでハッと頭に浮かぶのは、展示序盤で見た雨の降る水盤のイメージである。身体の中に音の雨が降る。それが無数の波紋を作り、染みわたる。もしかしたらその時間のことを「聴く」というのかもしれない、と思った。最後の最後での、見事な伏線回収を感じる瞬間だった。