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平成初期の日本美術を振り返る。村上隆や奈良美智ら50組以上集結の展示をレポート

2025.9.19

#ART

『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』国立新美術館2025年展示風景
『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』国立新美術館2025年展示風景

多彩な作品を生み出した、日本というプラットフォームを見つめる貴重な機会

1989年は昭和天皇が崩御され、ドイツでベルリンの壁が崩された年で、国内外でグローバリゼーションが始まった。その後、2011年に東日本大震災が発生する前までの約20年間は、バブル経済の崩壊はあったものの政治は比較的安定しており、一方でインターネットやスマートフォンの普及で情報の質や量、価値観などが大きく変化した時期である。

ドミニク・ゴンザレス=フォルステル『安全地帯のアン・リー』(2000年)ファン・アッベ市立美術館(ファン・アッベ市立美術館振興財団寄贈)蔵 / アーティストのピエール・ユイグとフィリップ・パレーノが、版権を買い取った日本のキャラクター「アン・リー」の連作を作るという呼びかけによって生まれた作品で、インターネットによってネットワーク化された社会の環境を示唆している。 / 『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』国立新美術館2025年展示風景

会場では、著名なアーティストの創作を、当時の社会や他の作家との関わりの中で鑑賞する形になる。そのため、個々の作品を体験するに留まらず、アーティストたちが多彩な作品をつくり、活躍できる土壌があった日本というプラットフォームについても、検討させられる展示となっている。『時代のプリズム』というタイトルは、複数の視点の交差によって浮かび上がるアートの軌跡を、固定された歴史像に囚われることなく見つめ直す試みを鮮やかに示す。

宮島達男『Slash』(1990年)京都国立近代美術館蔵 / 赤と緑のデジタルカウンターは1から9まで変化するが、死を意味する0は表示せずに暗転する。テクノロジーを体現しながら変化や関係性、永遠性を表現する、本展を象徴する作品の一つと言えよう。 / 『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』国立新美術館2025年展示風景

また本展は、アートを通じて当時の社会情勢や他のカルチャーとの化学反応がダイレクトに伝わってくる内容でもある。展覧会の公式HPに掲載されているキーワード集や会場の年表なども充実しているので、最近までの日本の美術の歩みを、知識としてのみならず感覚から学び、未来に思いを馳せる貴重な機会となるだろう。

『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』国立新美術館2025年展示風景

『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』

会期:2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木7-22-2) 休館日:毎週火曜日 *ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
開館時間:10:00 ~ 18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30 分前まで
観覧料:一般2,000円、大学生1,000円、高校生500円 ※中学生以下は入場無料 ※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
主催:国立新美術館、M+、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催:日本経済新聞社
助成:モンドリアン財団
公式サイト:https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/JCAW/

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