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フェイクドキュメンタリーは「レイヤー操作」がカギ
両氏は、フェイクドキュメンタリーの特徴は「作品を捉える際のレイヤー(階層)が多く複雑なこと」にあると語る。例えば『飯沼一家に謝罪します』は、同作に登場する「飯沼一家」が火事で亡くなってしまった謎を追う架空のドキュメンタリー番組として展開するが、作中ではさらにその飯沼一家が存命時に出演した、別のバラエティ番組も流れるという複雑な構成だ。大森は「自分の態度を決めかねる、保留せざるを得ないのがフェイクドキュメンタリー独特の感覚です。ホラーではない作品でも不安になってしまうのは、このレイヤーが見定められないからです」と語る。
さらに大森は、そうしたレイヤー操作はフィクション以外の番組でも行われていると指摘する。
「バラエティ番組でVTRが流れている際、スタジオの様子を捉えたワイプも同時に映されるのは、視聴者のレイヤーを固定するためです。これは、視聴者がVTRを見てどんな感情を抱けば良いのかもアウトソーシングされていると言えますし、今は大量のコンテンツがある時代なので、いちいちそれらを見て感情を動かすのも大変だからということで、ワイプがあることは意外に大事なんです。そうした作用を応用したのがフェイクドキュメンタリーだと思っています」。