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いつだって地下から世界が変わる
ショーでは、クイーンたちがステージから降りて、観客たちの中に飛び込んでいく瞬間もあった。そこではチップが飛び交っている。
BEAMSが提供するコラボサングラスを身につけた観客たちは、推しクイーンの名前が入ったうちわを掲げたり、レインボーフラッグを振ったり、指ハートを掲げたり、ブリンブリンにトゥワークしたり、思い思いの身振りでこの場を楽しんでいた。美しい光景だった。
会場に学校のチャイムが鳴り、この日のエンディングを飾るニンフィアとヴェラによる”Gyaru”パフォーマンスが始まると、会場の熱気はこの日の最高潮に。ドラァグのイリュージョンの中では、クイーンにもギャルにもなれる。
もともとクィアたちが差別への抵抗のため、ずるずるとドレスを引きづり(drag)歩いたことから始まったドラァグカルチャー。それが今、アートフォームとして世界を魅了している。クィアのボールルームカルチャーを描いた1990年の映画『パリ、夜は眠らない』では「オピュランス」という言葉が「全てを手に入れる」という意味で登場する。
時は流れ今、この場所における「オピュランス」とは、なりたい自分やあるべき姿の獲得を意味しているのではないだろうか。日本もいつか、誰もが自分らしく生きられる場所になれたなら。まずはここ、新宿の地下からオピュランスを始めよう。いつだって世界は地下から変わる。