INDEX
「ドラァグはインスピレーションと希望を与えること」(ニンフィア)
東京に来るおよそ48時間前、ニンフィアにメールで軽いインタビューをすることができた。
台湾系アメリカ人のドラァグパフォーマー。2018年に台北でパフォーマンスを始めた。2024年『ル・ポールのドラァグレース』シーズン16で、東アジア系初の優勝という快挙を成し遂げた。彼女の勝利は台湾の蔡英文総統からも称賛され、台湾の総統府でのパフォーマンスに招かれた。5月には『Forbes』誌の「30 Under 30 Asia 2024」アート部門にリストアップされた。
ニンフィアはドラァグを「創造すること、自分の好きなことを追求すること、芸術的表現を通じて変化の柱となること、そして観客が自分自身に誇りを持てるようなインスピレーションを与える希望」と語った。「私はいつも、舞台でのパフォーマンスを通じて、自分の歴史やクィアネスを誇りを持って披露します」。
ニンフィアは中学生あたりで少女時代のコスプレを始め、徐々にドラァグカルチャーに魅せられていった。「自分が人生で何をしたいのかはわかりませんでしたが、美しい服を作ることに情熱があるのはわかっていました。ドラァグはファッションだけでなく、メイクやヘアなどを通して自分自身を表現するのに完璧なアートの形式だったんです」。
ニンフィアのドラァグを語る上で、「台湾」というキーワードは外せない。『ルポール』の優勝を決めた最後のリップシンクバトルで、ニンフィアが選んだ衣装はタピオカをモチーフにしたものだった。「タピオカティーは台湾の国民的ドリンクです、フィナーレでは台湾を強く感じさせる表現をしたいと思いました」。
「人は祖国との絆を断ち切ることはできません。台湾は私の心の一部として常に自分の中にあります」。優勝したステージ上で、ニンフィアは「台湾、この優勝はあなたへ」と呼びかけた。優勝後には祖国・台湾の総統府にて前台湾総統・蔡英文の前でパフォーマンスをすることになる。ニンフィアは、このパフォーマンスが人生で一番思い出に残っていると教えてくれた。
台湾といえば、東アジアで初めて同性婚を合法化した、クィアにとっての楽園だ。ニンフィアは「台湾の出身であることをとても誇りに感じています。台湾はすべてのジェンダーや性的マイノリティの平等性を改善することにおいて、地域をリードしています」と話す。
さらに、アジアの中でジェンダーマイノリティーの課題に遅れをとる日本に対し「自分自身でいることを恐れず、決して引き下がらないでください。それは難しいことですが、でも、コミュニティとして団結すれば変化を起こし続けることができます」とメッセージをくれた。
やりとりの間、ニンフィアは、台湾からニューヨーク、それからオーストラリアへ、まさに風のように世界を飛び回って、各地でショーを行っていたという。