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全力の印刷で、マンガをアートに

反対に、見慣れない印刷もある。本展を企画 / キュレーションする「集英社マンガアートヘリテージ」は、マンガというアートを未来に伝える集英社のプロジェクト。そのひとつとしてマンガ作品をアートとして次世代へ継承してゆくべく、高品質な素材&職人の印刷技術によって「マンガの版画」を制作し、販売するサイトやギャラリーを運営しているのだ。写真は、金属刷版を使った伝統的な活版印刷で刷られた特別な一枚。版をぎゅっと押し当てた跡の微かな凹凸が、印象的なシーンの説得力を何倍にも強化している。そもそも「印象的」の「印象」って、「押し付けて形・色をうつすこと」だった、とふと気づく。
ちなみに同プロジェクトの公式HPによれば、マンガの原画(B4)と浮世絵(美濃版)の大きさはほぼ一致するらしい。今更だが、マンガとアートの間にあると思い込んでいた境界線が、その一文ですっと見えなくなった感覚があった。

同様に、超高品質なカラー作品も多数展示されていて眼が愉しい。鮮やかな色彩は原画と勘違いしそうになるほどだ。

「The Wall」をたどりながら、会場の奥へと進んでいく。天井から吊り下げられているのは、コミックス100巻の表紙を刷り上げるための7色の版だ。通常のジャンプコミックスの表紙は基本の4色(シアン、 マゼンタ、 イエロー、 ブラック)+蛍光ピンクの5色で印刷されることが多いそうだが、記念すべき100巻の表紙を彩るためには、さらに蛍光ブルーと蛍光イエローを加えた7色で原画の色彩を再現したという。こうして見ると本当に多色刷りの浮世絵のように見えてくるから不思議だ。