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踊ってばかりの国インタビュー 『On the shore』に込めた逃避の肯定

2024.7.29

#MUSIC

「海」はエスケーピズムの最果て

―アルバムタイトルが『On the shore』=「渚にて」で、タイトル曲だけではなく、他の曲にも海をモチーフにした歌詞が散見されます。海はこれまでも踊ってばかりの国の歌詞によく出てくるモチーフでしたけど、今回なぜこのタイトルにしたのでしょうか?

下津:僕はずっと街にいると、気持ちがパンパンになっちゃうんですよ。それで体調も悪くなってくる。でも海に行ったら速攻治るので、海は毒素を吸い出してくれるのかなとか思ったりして。それって僕なりのライフハックで、そのおすそ分けができたらな、くらいの気持ちなんですけど。

―最初にお父さんの話がありましたけど、たしかお父さんはサーフィンお好きなんですよね。

下津:また出た(笑)。

―でもそこも関係はありそうですよね。

下津:もちろん。小さいときに学校休んで2週間とか海行って、サーフィンしたりもして。そういう経験があると、大人になっても「しんどくなったら、海に帰ったらええ」みたいなところがあるので、こういう開き直った生き方ができているのも、父であり、海のおかげというか。でも僕のエスケーピズムの最果てがたまたま海やっただけで、これが登山の人もいたり、野球の人もいるはずで。街で喰らうことって人間として正常なことやと思うんですよ。口では言わないだけで、みんなそういうことが各々あると思うから、逃げてもいいんだよ的な精神で書いてます。

丸山:僕も海が好きだから、今の話はすごくわかります。

下津:ツアーで海に行っても最初に入水するのがこの2人(下津と丸山)っすね。テンション上がっちゃいがち(笑)。でもこのアルバムの曲じゃないですけど、踊っての海感が確立したのは『Paradise review』の“海が鳴ってる”って曲で。明るいけど重たいというか、そういうイメージがあの曲でみんな共有できたんちゃうかなって。

―海にはいろんな側面があって、心が安らぐみたいなことももちろん一つとしてはあるけど、その重さだったり、深さだったり、未知の恐ろしさもあって。

下津:命を奪うものでもあるし。

―そうですよね。だからこのアルバムには海のいろんな側面が曲に表れていて、それこそ命みたいなことで言うと、『On the shore』というタイトルには「彼岸」みたいなイメージもある気がして。踊っての歌詞にはずっと死生観も描かれていると思うし。

下津:深海って僕らが生身では絶対たどり着けない別世界なので、人間の小ささも思いますね。「彼岸」って言葉は当てはまってるかもしれない。

―今回最初の曲がインストなので、“兄弟”が実質的な1曲目になっていて。この曲については野音のMCで「友達が今年いっぱい死んだり、それでも前に進もうとする人がいたり、そういうのを見て書きました」と言っていましたよね。

下津:亡くなった人に向けてというよりも、残された友達に向けて書いてます。このアルバムは音像だけで言うと、最初は昼間の明るい印象で、最後に向かって夜が更けていくイメージで、“兄弟”は希望の曲にしたかったっすね。

―亡くなった人に思いを馳せてはいるけど、最終的には同じ時代を生きている人たちに向けて、<兄弟、そちらの調子はどうだい?>と呼び掛けている。

下津:はい、朝日がまた来ることを歌ってます。

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