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むらかみなぎさ×安部勇磨 お互いの作品に不可欠な存在となった2人の絆物語

2024.12.16

#MUSIC

一緒にレコーディングした“理由はない”“裏庭”のこと

―安部さんの曲のレコーディングに参加した経験を踏まえて、なぎささんは自分の曲を安部さんにプロデュースして欲しいと思ったのでしょうか。

むらかみ:そうですね。安部さんとは制作中に、音楽と全然関係ないこともたくさん話しました。その積み重ねで信頼できる人だなと思って。私のつくった音楽を安部さんがプロデュースしたらどういうものができるのかなと思って、勇気を出してお願いしました。

―どんな話をしたことが印象に残っていますか?

むらかみ:私の持ってる歌の個性について話をしてくださって、自分では気づいていない部分もたくさんありました。今回は安部さんのプロデュースで引き出してもらえた気がします。音楽のジャンルを広げてくれたのもそうなんですけど、それよりも私の人間的な要素を引き出してくれて。頑固さとか曲がらなさみたいな部分も、音で表現できるんじゃないかとか、そういう話もよくしたんですよね。

―実際安部さんはプロデュースするにあたってどんな部分を意識しましたか?

安部:なぎささんのこれまでの曲を全部聴いて、インディっぽくなくていいんじゃないかと思いました。声がすごくいいから、シンプルにいい楽器やいいプレイヤーと一緒にやったらそれだけで十分いいんじゃないかなって。

安部:ただ最初にデモが送られてきたときは、全然変えちゃおうかなとも思ったんですよね。当時ファンクやソウルをよく聴いてて、いま吉田美奈子さんみたいなことをやってる人って他にいないけど、なぎささんはボーカル的に多分できるし、それをいまの人たちといまの録音環境でやったらいいんじゃないかと思って。それで実際ちょっとつくったんです。でも細野さんが「人の作品で自分の方向に持っていきすぎるのは僕はあんまりやらないな」と言ってたのを思い出して。それで最初はなるべくいまのなぎささんのスタイルに沿うような形でやろうと思って、今回はこういう形になりました。

―安部さんとレコーディングをするにあたって、なぜ“理由はない”と“裏庭”の2曲を選んだのでしょうか?

むらかみ:“理由はない”は歌詞からつくったんです。歩きながらボイスメモに言葉を残して、書きたいことがきちんと書けた感覚がありました。綴った言葉をみながら、どういうコードがいいか、どういうバッキングがいいかなって、家でいろいろやってみて、すごく好きな曲ができました。安部さんがプロデュースしたらこの曲がどう変わるのか、すごく興味があったので、”理由はない”を選びました。2曲プロデュースしていただくことが決まっていて、いろんな側面を見せたかったので、違う雰囲気の曲がいいなと思って、“裏庭”を選びました。

―歌詞から曲をつくることが多いんですか?

むらかみ:普段はそういう曲のつくり方をすることはあんまりなくて、歌詞とメロディーとコードを同時につくっています。でもこの曲は、アーティスト写真の撮影があって公園に行ったときに、ちょっと早くついたので散歩をしてたら急に思いついたんです。とりあえず、思いついた言葉をばーっとボイスメモに録ったから、いつもよりも歌詞が詰まってるんですよ。空白がほとんどなくずっと言葉がいて、リズムがあって、コードはあまり変わらない。

―安部さんはデモをもらって、どう解釈しましたか?

安部:本人にも言ったんですけど、「これ押し曲なの?」って言いました(笑)。

むらかみ:あははははは。

安部:「ずっとワンコードじゃん。なんでこれを押そうとしてるの?」みたいな、それも込みでやっぱり面白い人だなと思いました。だから“理由はない”は未だに「難しい曲だったな」という印象で、録音に参加してくれたメンバーとも「これでいいと思う?」みたいな話を結構しましたね。こうやって人の曲をアレンジするのは初めてだったので、感じたことのない責任感があって、自分の曲だったらふざけても自分で後始末ができるんですけど、なぎささんの曲だからあんまりふざけてもダメだしなとか悩みながら、最終的に「これかな」っていう。ギターの歪みをちょっとサイケな感じにしたり、ただのメジャーコードの明るい曲にはしたくなくて、はっぴいえんどの“夏なんです”みたいな、ああいう宙ぶらりんな感じ、着地しない感じが出せたらいいなと思いました。

―「着地しない感じ」というのは“理由はない”というタイトルにも通じますよね。

むらかみ:理由をわかりやすく説明することがいいとされがちだけど、私はそこに回収されないものがすごくたくさんあると思っていて。簡単でわかりやすいものじゃない方が好きだし、別に理由をわかってなくても、それをやりたいとか、その気持ちだけでいいと思うんです。なので、歌詞はなるべく枠にはめないで書きたいと思うし、自分も何にも当てはめずに生活できたらと思うので、それで“理由はない”にしました。

セルフライナーノーツによると歌詞は、公園を歩きながら小学校の頃を思い出して、それをそのまま書いてるわけですよね。

むらかみ:そうですね。何かを伝えるために書いたというよりは、子どもの頃の景色をそのまま歌にしたっていう感じ。でもつくった後に聴いてみると、今思っていることがきちんと書けていた。特に理由がなく思いつきで書いた言葉でも、理由が後からついてきたり、またその理由も変わっていくと思うし、そういう流動性のあるものがいいなといつも思っています。

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