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第4章「交響する色彩」は、最晩年のモネに見えた景色

展示はいよいよハイライトを迎える。第4章「交響する色彩」で鑑賞者を待ち受けるのは、1918年以降に制作されたモネ最晩年の作品たちだ。20点以上集まった『睡蓮』もすごいけれど、この章の見応えもまた、重厚である。作品はいずれも小型の連作で、たとえば上の写真に写っているのは全て庭の太鼓橋を同じ構図で描いたものだ。これまでモネが制作してきた積み藁などの連作と比べて、色彩と筆使いがショッキングなほど大胆になっている。

太鼓橋の絵である、と強く念じなければ、何が何やらわからないかもしれない。白内障の進行に伴う色覚異常、視力の低下に苦しみながらも、80歳近くなったモネの創作意欲は衰えなかったという。のたうつような筆遣いが、描いているモネ自身の身体の動きを想像させる。眺めていると、太鼓橋の絵を観ているというよりも、画家の描くという行為そのもの、そして執念を見せつけられているような感覚になるだろう。モネの晩年の作品が、(ジャクソン・)ポロックのような抽象表現主義の先駆けだとして再評価されるようになった所以である。

モネの手がけた最後の連作『ばらの庭から見た家』も、同じ構図の8点のうち4点をまとめて観ることができる。右から2作目の、夕焼けのオレンジ色の光が全てを覆っているような画面が美しい。